猛牛のささやきBACK NUMBER
26年ぶり日本一、21億円の置き土産まで!“マッチョマン”吉田正尚がオリックスで愛されまくった理由…先輩ラオウ「みんなでボストン行く」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byBillie Weiss/Boston Red Sox/Getty Images
posted2022/12/18 11:02
ボストン・レッドソックスの入団会見に臨んだ吉田正尚(29歳)。少し照れくさそうに英語で挨拶した
吉田はもともとメジャーへの興味が強く、オリックス入団時に選んだ背番号は、憧れてやまないブライス・ハーパーと同じ「34」だった。
プロ1年目から、身長173cmと決して大きくはない体を目一杯使った豪快なスイングは見るものを魅了した。そして年を追うごとに、そのスイングは緻密さを増していった。
2020年は打率.350、21年は.339で2年連続首位打者を獲得。今年は松本剛(日本ハム)に次ぐ2位だったが.335を記録し、出塁率はリーグトップの.447だった。7年間の通算打率は.327。極めて三振が少なく、コンタクト力に優れている。
吉田はデータ戦略チームの分析も積極的に活用しながら、「この投手のこの球に対してはバットをどの角度で、どう入れたら、どう飛んでいくのか」ということを研究し、そのイメージ通りのスイングでボールにコンタクトすることを追求してきた。常々「1球で仕留める」をテーマに語っていたが、今年は「1球で仕留められたのでよかった」というコメントを多く聞いた。
何よりの魅力は勝負強さだろう。オリックスの本拠地・京セラドーム大阪での最後のスイングが、日本シリーズ第5戦9回裏の劇的なサヨナラ本塁打だったのは何とも吉田らしい。
そうした7年間の積み重ねが、憧れのメジャーでの高評価につながった。
「レッドソックスは阪神みたいな感じらしい」
破格の大型契約は喜ばしいことだが、レッドソックスはファンが熱狂的で、時に厳しいことで知られる。吉田も、「レッドソックスは阪神みたいな感じらしいです」と杉本に話していたそうだ。契約が破格であるほど、期待に応えられない場面では厳しい声も浴びせられるだろう。
それでも、吉田には鈍感力という武器もある。
新人の頃から、「周りにどう思われるか」ということは思考の外にあるようだった。人のことは気にせず、我が道を突き進む。
そうありたいと思っても、どんな世界であれ、なかなかできることではない。他の選手からは「うらやましい」という声もあったほど。「結果を残すのはこういう選手」という声もあった。