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レジェンド黒田博樹がカープのアドバイザーに就任、新井監督の“新しい家族”に“漢気”注入でチーム再建を目指す
posted2022/12/19 11:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
KYODO
涙の抱擁から7年、2023年から再び2人のレジェンドによる広島の物語が始まる。このオフ、新井貴浩新監督を迎えた広島が、11月に黒田博樹氏のアドバイザー就任を発表した。
正式な就任は1月1日だが、12月13日、黒田氏は突如マツダスタジアムに姿を見せた。前日に入団会見を行い、球場施設を見学する新人選手たちに言葉をかけるためだった。
その3日前に沖縄で行われた名球会のイベントで一緒になった新井監督からの直接の依頼であることに加え、広島に立ち寄る予定が重なり、何より黒田氏自身の広島への思いが就任前の始動という形に表れたのだろう。現役時代に「漢気」で知られた黒田氏らしいアドバイザー初仕事だった。
新人の前では、自身の失敗談を交えながらプロの世界の厳しさを説いた。
「自分自身、入団したときに、そこでゴールテープを切ったような気持ちになっていたところもあったので、ここが本当のスタートと、もう一度頭に入れてしっかり来年に向けて準備して欲しい。昨日(12日)入団会見で、今日厳しいことを言っていいのかと思いましたけど、それだけ厳しくもあり、素晴らしい世界だと伝えたいと思いました」
リラックスムードの新人選手たちは黒田氏の姿に、背筋を伸ばし真っすぐな目で見つめ、語りかけてくれる言葉ひとつひとつを胸に刻んだ。即戦力と期待されるドラフト3位の益田武尚(東京ガス)は表情を引き締めて言った。
「先のことをしっかり考えて、今やれることをやりながら、長くプレーできるように練習をしていかないといけないなと思いました。社会人でも厳しさを感じていましたが、黒田さんの言葉を頭に入れながらやっていきたい」
日本だけでなく、米国でも活躍した大先輩との初対面だけでも気が引き締まったに違いない。そんな新人たちにあえて厳しさを伝えた。それは単にアドバイザーとしての任務を果たしただけでなく、新井監督との絶妙なバランスを取ったようにも感じられた。
現役時代と同じ阿吽の呼吸
前日の新入団選手発表会見で、新井監督は新人選手の心をほぐす言葉を伝えていた。
「カープの新しい家族となった10人を、24年前ここに立った自分と重ね合わせて見ていました。期待や希望、不安が入り交じる中、すごく緊張していたのを覚えています。安心してください。カープは12球団一アットホームで、家族的な球団です。焦らなくていいので、一緒に頑張っていきましょう」