マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「高校球児なら必死で走る場面なのに…大学野球は歩くでしょ?」なぜ“3000人の高校野球ファン”は大学野球を見ずに帰った? 理由を聞いてみた
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2022/12/17 17:01
明治神宮大会、大学の部で優勝を決め胴上げされる明治大・村松開人。10月のドラフト会議で中日から2位指名を受け、仮契約を結んでいる
「野球が小難しくなるっていうか、チーム同士や選手同士のかけひきが、ゲームの中に入ってきて。そっちのほうに興味のある人にはいいかもしれないけど、一般の野球ファンには野球が難しくなるんじゃないですかね。その分……つまり、考えながら野球をする分、タイムが多くなったり、サインがややこしくなったり、時間も長くなるし。そのへんがどうなんですかね、テレビの高校野球に慣れてる人には」
「甲子園の高校野球を見たい人はたくさんいる。されど、甲子園まで行くのは遠い。その高校野球が神宮で見られる。だから、たくさんの人が来る。東京や関東のファンが“高校野球”を見られる絶好の機会なんですよ」
「高校生なら走っている場面で、歩いてるとか…」
そこまではわかっても、その先まではちょっと……という人もいる。
なかなかピンと来る「コメント」と出会えなかった中で、ある社会人野球指導者に「よくわかりませんが……」という但し書き付きで、こんなコメントをいただけた。
「私たち、こうやって神宮に来てるのは、来年、再来年のウチの新戦力探しが目的なんですけど、もちろん、どっちの試合も一生懸命見てるわけですが、気がついてみると、席で人と話をしてるのって大学野球の時のような気がするんです。高校野球やってる時は、じっと見入ってる。同じような目的で来てる人、みんなそうですよ。高校生、採らないのに、じーっと見てる」
大学野球には「隙」があるという。
「展開が緩いっていうんですか……高校野球なら走ってる場面で、選手が歩いてるとか。私たち、どちらかといえば、ターゲットは大学生のほうですから、そんな緩い野球やってもらっちゃ困るんですけど、2、3年前まで甲子園であんなにとんがった野球やってた選手が、進学したら、ゆっくりした野球を目の前でやってる。そこにガッカリしたことがあるんじゃないですかね。私たちもそういうこと、結構あるんですよ。高校の時、あんなに躍動感あふれるプレーをしていた選手が、大学ですっかり緩くなっていて、あれ?って落胆すること」
「全力疾走とか、キビキビしたプレーとか、いいこといろいろやってたのに、大学で出来なくなるっていうのは、やっぱり“やらされてた”っていうことですよね、高校では。全力疾走は、相手をあわてさせてエラーを引き出せるし、キビキビした野球は相手への威圧感になる。立派な“戦術”なんですよ。なぜやるのか?を知らないで、ただやらされてきた選手たちは、大学でうるさく言われなくなるとサッとやめちゃって、メリハリのない野球になってしまう。もちろんこれは一部のチームではあるんですけどね」
帰ったファンを呼び戻したい名勝負だった
11月24日、「大学の部」決勝戦。明治大vs国学院大(1対0)。