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西野前監督が森保一監督に伝えた「ロストフの悲劇」の真相「0コンマ何秒の世界がそこにはあった」「俺自身が想定できていなかったんだよ」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Kaneko/JMPA
posted2022/12/05 20:01
カタールW杯でグループEを2勝1敗で通過した日本代表の森保一監督。大会前、前監督の西野朗とベスト8に向けた対話を交わしていた
西野 俺は、中3日あれば十分だと思っていたんだよな。長友(佑都)なんて練習が終わってもいつもガンガンに走っていたから、ベルギー戦前に「お前はまったく疲れないね」と話したら「グループステージでアップアップでした」って返してきた。ワールドカップ1試合の疲労度は、自分が考えるよりもかなり上なんだなって。
森保 佑都は今でも目が合うだけで「絶好調です」って言います(笑)。でも監督をやっているとその一言に勇気づけられます。
ベルギー戦の後悔「0コンマ何秒の世界がそこにはあった」
西野 決勝トーナメント1回戦のベルギー戦、俺は後半勝負に懸けていたし、もっと言えば延長勝負も考えて、交代枠も残していた。そうしたら、長友が後で言ったんだよ。「延長に入っていたら僕、もう走れませんでした」って。
後半に乾(貴士)が2点目を取って、長谷部(誠)が「どうしますか?」って聞いてきた。「2点リードしているからディフェンシブに行け」とか、逆に「最終ラインをプッシュアップして3点目を奪いに行け」とか、何か極端に振れた指示が欲しかったんだろうな、と。でもそのときの俺は長谷部が欲しかった明確なメッセージを伝えることができず、「このままでいいんだ。このままでいいんだ」と、アイツのケツを2、3回叩いて送り出した。ベルギーが戦術を変えてきて、上へ上へとボールを送るからこれなら楽だと思った。でも少しずつ間延びして、距離感もズレていくなかでポンポンとやられてしまって、最後は真骨頂の高速カウンター。それはもう、悔いの残るゲームだよ。0コンマ何秒、数センチの世界がそこにはあった。