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「世界で三笘だけ」筑波大の恩師が明かす“1mmアシスト”三笘薫…陸上関係者を仰天させた話「彼を天才だと言う人もいますが…」
posted2022/12/04 11:02
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Kichi Matsumoto/JMPA
「23歳、24歳で日本代表の中心プレーヤーになる」
2017年1月に筑波大学体育専門学群の1年生が、自己分析シートに書いた『なりたい自分』である。
あれから5年と11カ月。中東のカタールでサッカー日本代表の三笘薫は、試合の流れを変える切り札となり、世界を驚かせ続けている。
「分かっていても止められない」理由
プロ3年目の25歳でワールドカップのメンバーに初めて選ばれた三笘は、初戦のドイツ戦で1点を追う後半途中から出場した。一人で仕掛けて、絶妙のパスで局面を打開。同点ゴールのきっかけをつくると、逆転勝利の呼び水となる働きを見せた。2戦目のコスタリカ戦でも、0-0の62分からとっておきのジョーカーとして出場。ゴールにはつながらなかったが、終盤に見せた左サイドでの独力突破は大きな期待感を抱かせた。
三笘のドリブルは、いまや日本の命運を左右する大きな武器と言っても過言ではない。本人もそこに特別なこだわりを持ち、大学時代に磨きをかけてきた。4年時には研究テーマとしても掘り下げ、自らをサンプルにして検証。ボールを持てば、ボディフェイントなどで駆け引きし、対峙する相手の重心が動く瞬間を見逃さない。筑波大で毎日のように1対1の相手を務めた山川哲史(現ヴィッセル神戸)は、よく頭を抱えていたという。その光景をグラウンドの脇でじっと眺めていた筑波大の小井土正亮監督が、懐かしそうに回想する。
「『何をしてくるか分かれば、守備側が有利だろ』と山川に言ったのですが、『それでも逆を突かれるんです』と話していました。分かっていても止められないんですよね」
あの「1mmアシスト」はなぜ生まれた?
三笘はただマーカーをかわすだけではない。一瞬で相手を置き去りにするスピードで違いを生み出しているのだ。3戦目のスペイン戦では、その持ち前のスプリント力を攻守両面で発揮した。後半開始からピッチに入り、左アウトサイドから一気に加速して敵陣深くまでチェイシング。一人目にプレスをかけて、バックパスされた後も、さらに全速力でボールを追いかけた。そこから前田大然、伊東純也とプレスは連動し、堂安律の同点ゴールが生まれた。小井土監督は献身的に守備に奔走する背番号9を見ながら、あらためて成長を感じ取っていた。