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森保監督の“あるジョーク”で会見場は和やかに…スペイン戦の裏で起きていた“情報戦”の真相「現地記者が見た、歴史的番狂わせの舞台裏」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2022/12/04 06:00
グループステージ第3戦のスペイン戦勝利の裏には、森保監督の“ある仕掛け”があった
森保監督は、あえて直接コミュニケーションをとらなかった
12月1日。スペイン戦が始まった。日本は開始からスペインに一方的にボールを握られる展開を強いられ、前半12分にはドイツ戦と同様に先制点を奪われた。内容的には防戦一方で攻め手の見えなかったドイツ戦よりは攻撃に転じる道筋が見えていたが、スペインのクオリティーそのものがドイツ以上で、厳しい展開であることは間違いなかった。
前半を終えて0-1。しかし、日本は後半、ドイツ戦の逆転劇という成功体験も力となって勢いを見せ始めると、立ち上がりの数分間にスペインを一気に逆転した。そして、2-1のスコアのまま試合は終盤にさしかかった。すると、後半42分、コスタリカ戦で古傷の右膝を痛めて別メニューが続いていた遠藤がひょっこり交代でピッチに立った。スペイン戦前は予定されていたメディア対応も回避し、一度も報道陣の目に入る場所に姿を現さなかった遠藤の出場は、サプライズだった。
アディショナルタイムの7分間を含めて約10分間、クローザーとしての役割をまっとうした遠藤は、「ドクターには無理かも、と言われたんですけど、思った以上に回復した」と笑顔。コスタリカ戦からの3日間は一度もチームに合流しないままの試合出場だったことを明かし、「8割くらいはできると思ったけど、1日も練習しない状態で先発はどうなのか。森保さんには難しい判断をさせてしまってそこは申し訳なかった」と言った。遠藤によると、この間、森保監督とは直接コミュニケーションを取らず、「遠藤⇔ドクター⇔森保監督」のヒアリングでメンバー起用の判断がなされていったという。
選手と距離を詰めるところと、距離を取るところの使い分けも冴えているようである。
日本は12月5日(日本時間6日0時)、ラウンド16でクロアチアと対戦する。酒井の状況は? 冨安や遠藤は先発でいけるのか? 再び情報戦が始まりそうだ。
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