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「この監督じゃダメだと思うなら、協会にぶつけてくれて構わない」森保一監督が吉田麻也を呼び出した日…“歴史的番狂わせ”の1年前 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byGetty Images

posted2022/11/25 17:25

「この監督じゃダメだと思うなら、協会にぶつけてくれて構わない」森保一監督が吉田麻也を呼び出した日…“歴史的番狂わせ”の1年前<Number Web> photograph by Getty Images

“歴史的番狂わせ”…海外メディアに称賛された森保一監督の采配。その7カ月前に森保監督が語っていたこととは?

 アウェーで敗れたサウジアラビア戦からメンバー、システムを変えてホームでオーストラリアに勝利した10月の2連戦がターニングポイントになった。完全アウェーのジッダでは、結果的に一つのプレーが命運を分けた。後半途中、柴崎岳のバックパスがかっさらわれ、決勝点を与えてしまった。

 帰国後、話し込んでいる森保と柴崎の姿が目撃されている。

「試合前、一人ひとりに“最後まで体力を持たせようと思わなくていい。最初から全開でやってほしい”と伝えていたんです。岳はまさにそのとおりにつなぎ役として走り回ってくれた。疲れが早くきているなと感じて代えるかどうか考えていたときに、失点につながるプレーが生まれました。だから私のミスなんです。自分の要求を具現化してくれたことに“ありがとう”と伝えました」

 ただ、実直な指揮官は「次」に向かわせるために厳しく言うことも忘れない。

「疲れていたからうまくいかないというのはないほうがいい。そこは本人の成長のために改善してほしいとも言っています」

「この監督じゃダメだと思うなら…」

 敗北にも動揺はない。しかし3試合が終わって早くも2敗目という緊急事態となり、キャプテンの吉田麻也を呼び出してこう伝えている。

「この監督じゃダメだという思いが、もしみんなのなかにあるなら、協会にぶつけてくれて全然構わない」

 無理に監督の座にとどまるつもりはない。すべては日本サッカーの発展のため。何かあれば常にそこに立ち返るようにしてきた。

 監督に対する不満の声は上がらなかった。むしろその覚悟がチーム全体に共有され、一体感を呼び込んだ。

 練習での好調ぶりから田中碧、守田英正の(オーストラリア戦)先発起用を決め、システムも4-2-3-1から「自然と」4-3-3にチェンジした。サイド突破を阻む守備から素早く攻撃に移る新戦術は、ウイングに入る南野拓実、伊東純也が所属クラブで担う役割ともマッチしていたため、温めていたプランの一つでもあった。

【次ページ】 「柴崎をよく使いましたね、と言われましたよ」

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