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森保一監督が明かしていた“プラン”「バイエルンの試合を見まくろうと思います」歴史的番狂わせの7カ月前「3バックにはいつでも変更できる」
posted2022/11/25 17:26
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Getty Images
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「みんな熟睡できず…簡単なことじゃない」
成長の跡をはっきりと示したのが、一度は見失いかけたワールドカップ出場権を手にするアウェーのオーストラリア戦(3月24日)。引き分けでもOKという条件のなか、彼らはあくまで勝ちにこだわった。前掛かりになる分、縦パスを引っ掛けられて何度もカウンターにさらされたものの、相手の体力が落ちた後半に2点を奪い取った。
「選手たちには積極か消極かプレーの選択が出てきたときには積極を取ってほしいと伝えていました。あそこまでカウンターを受けたくはなかったですけど(笑)。ただ、その積極性は認めてあげたい。引き分け以上が欲しいと考えたときに、受け身で戦って先制点を取られるとおそらく押し切られると思うんです。積極的であればたとえ失点しても取り返せるかなと考えていました」
欧州組が多数を占める現状、集合しても準備期間が短いために2連戦のうち一発目の試合はどうしてもパフォーマンスが上がっていかないというジレンマがつきまとった。チームとして事前にスカウティング情報などを個々に伝えるなど、できる限りの準備をしてオーストラリアを上回ったことも大きな成果になった。
欧州でプレーする選手たちの陰ながらの努力を目にしてきた。
「わずか2、3日間で長距離移動の疲れを取り、時差を調整し、気候に順化していくなかで試合をすることがどれほど大変か。みんな熟睡できず、体の状態も戻らないまま最大限の力を出そうとしてくれました。代表選手なら当たり前と言われるかもしれませんが、そんな簡単なことじゃない。
代表の試合が終わって所属クラブに戻ったら試合に出られず、ポジションを再び奪うところから始めなきゃいけない。自分のため、というくらいの志じゃ(気持ちは)持たない。日本サッカーの勝利と発展のためと思って彼らはやってくれています。近くで見ている僕が一番そう感じています」
実際、長距離移動を強いられる日本代表への合流を快く思わないクラブだってある。それでも日本代表のために彼らは集まってくる。代表でもクラブでもプレッシャーにさらされ、打ち勝とうとしてきた。それが選手を、チームをタフにさせ、指揮官が心から誇れるまでになった。だからこそ欧州列強に挟まれようともベスト8以上の目標の看板は下ろさない。下ろすわけがない。
「バイエルンの試合を見まくろうと思います」
大会前の準備期間がないのは、これまでのワールドカップとまるで異なる。欧州の主要リーグは11月11〜13日に中断となり、日本の初戦となるドイツ戦(23日)までの時間は限られてしまう。バイエルン主体のドイツ、バルセロナ主体のスペインは所属クラブからの流れで入っていけるが、各クラブからバラバラに集まってくる日本にとっては不利な条件にも思えてくる。
ここでも森保の反応は違う。