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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
中学3年生の鎌田大地が“上から目線”で「結構うまいっすね」…恩師に聞く“難しい男”の高校時代「本気でプロになる気あるんか?」
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byGetty Images
posted2022/11/22 11:06
カタールW杯での活躍が期待される鎌田大地。京都・東山高校で過ごした3年間について、同校サッカー部の福重良一監督に話を聞いた
鎌田大地の転機になった“失敗”とは?
取材中、「鎌田大地の“操縦術”はないんです」と語る福重の表情はどこか楽しげだった。
鎌田はもちろん、湘南ベルマーレで活躍する池田昌生など、福重は指導者として20人以上の選手をプロの世界へ送り出してきた。現3年生の阪田澪哉(さかた・れいや)も、セレッソ大阪への加入が内定している。しかし、そんな名伯楽も白旗を上げてしまうほどの“自我の強さ”が鎌田にはあった。
「もうね、あらゆる手を尽くしましたよ。みんなの前で叱ることもあれば、個別に諭すこともありました。対戦相手には申し訳ないですが、ベストメンバーで戦うよりも『鎌田大地をもっとうまくするために、あえて試合に出さない』という方法を選んだこともあります。それが正解だったかはわかりません。もしかしたら、なにも響いていないかもしれない(笑)。でも、とにかく要求のレベルを下げることだけはしませんでした。『まだまだ足りない』と言い続けたことが、大地にとってはよかったのかもしれません」
2012年11月17日、全国高校サッカー選手権京都府大会決勝。1年生の鎌田は後半アディショナルタイムの決定機を外し、東山高校は京都橘高校に2-3で敗れて全国への切符を逃した。福重は「あの失敗がひとつの転機になった」と当時を振り返る。
「引退する3年生は大地をいっさい責めずに、『これから頑張れよ』と声をかけていた。あのときから本気でチームのことを考えるようになったし、自分の課題にも向き合い始めたように思います。彼は決してエリートじゃない。何度も何度も失敗と挫折を重ねて、それを乗り越えて大きくなっていった選手です。壁にぶち当たるたびに、グッと覚悟を決めてね。フランクフルトでも移籍当初は試合に出られませんでしたし、日本代表からも外された時期があった。そんな逆境も、彼にしてみれば『なんでこんなところで挫けなあかんの』という感覚なんでしょうね」
<後編へ続く>