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「桑田コイコイ」KKドラフト前に早スポが報じた幻のスクープ! PL学園・桑田真澄の独占取材と早大進学取りやめ→巨人入団の真相とは
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
posted2022/11/08 06:21
早稲田大学進学を表明していたPL学園・桑田真澄をドラフト前に独占取材した早稲田スポーツの紙面
フィルムを持ってカメラマンは逃げ続けることに…
写真を貸してもらえるだろう、と思って編集長の菅井暢浩に電話をした児玉だったが、
「桑田側と早スポだけに載せると約束していますから」
菅井の答は「ノー」だった。
唯一、現場フィルムを持っていた小座野は菅井の指示でこの日の夜、逃げ続けることになる。
「なぜ、自分のところの日刊のアマチュア担当に伝えなかったのか……。たまたま小座野が近くを通ったから何気なく耳打ちしただけ。会社的には大きなニュース、スクープを逃したことになる。今となっては、そういう意味で引け目は感じる」
と児玉は回想している。しかし、児玉は上司に、「彼ら現役が独自に見つけてインタビューを取ったから、フィルムは貸すことはできない、と言われました」と報告している。先輩の温かい親心があのスクープにはあったのである。
さて早スポの記事は桑田へのこんな配慮を見せている。「桑田君は進路を決定したわけではないので、進学かプロ入りかの選択に関して、質問を避けた。菅井は早稲田の印象を聞くことに留めた」と記事は伝えている。
この特ダネで当時の早スポ部員は、スクープをものにしたときの高揚感に浸ったのではないだろうか。しかも時の人・桑田の進路に関わることである。
しかし、まさかこれが幻のスクープになるとは思いもよらなかった。早スポ部員は桑田の早大入学を疑わなかった。当時の「特選入試に願書を出せば、合格すると路線は敷かれている」と信じていた。
しかし桑田はそれから2カ月後、巨人の1位指名を受け、入団することになる。
11月20日のドラフト会議で指名され、23日に願書提出のために上京した。ところが開かれた記者会見は早大受験断念の意思表明だった。
「どんでん返しに飯田監督の表情は冴えない。佐野マネジャーは仕方ないと話した」
こんな話が「早明ラグビー号」に載っている。数日間の桑田狂騒曲はこうして幕を下ろす。
密約説や清原との確執などその後も話題に上ることも多い。PLから早大野球部への入部者はこれ以降、今に至るまで出ていない。
当時の野球部・飯田修監督は桑田に2度会ったという。最初は大阪だった。