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「桑田コイコイ」KKドラフト前に早スポが報じた幻のスクープ! PL学園・桑田真澄の独占取材と早大進学取りやめ→巨人入団の真相とは
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
posted2022/11/08 06:21
早稲田大学進学を表明していたPL学園・桑田真澄をドラフト前に独占取材した早稲田スポーツの紙面
腕章をつけた何人かのうちの一人が言った。
「桑田君、本当に早稲田に入りたいの?」
桑田は少し戸惑ったような表情を浮かべると、返答の代わりに苦笑いを返した。すると、腕章の学生は本気とも冗談ともつかないような調子でこう続けた。
「悪いことを言わないから、やめておいた方がいいんじゃない?」
滝口の記憶では桑田が早稲田への思いを口にしなくなったのはそれからだった。あの日の一件が桑田を考えこませているのかもしれない。秋が深まるにつれ、滝口はそう考えるようになっていった。
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早スポのスクープ「桑田独占取材」の舞台裏
文中に出てくる早稲田スポーツ新聞会とは1959年に創刊され野球部、ラグビー部など学内スポーツ部の試合、活動などを取材し新聞、webで報道する学生サークルだ。
当時、早稲田スポーツ新聞会の記者はその東大戦で、試合観戦していた桑田に接触し、インタビューしたことをスクープとして記事にしている。このスクープはどういう経緯で成功し、桑田とのやり取りはどんなものだったのか。
KKドラフトの一端が後日談も含めて、2009年に刊行された「『早稲田スポーツ』の50年」(『早稲田スポーツ』50周年記念書籍刊行委員会)の中で詳しく記されている。掲載されたコラム『「桑田 早大進学」のスクープ!?』から引用して、その日の事実を残していく(読み易いように文責者が一部、修正)。
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1985(昭和60)年「9月号」3面に早スポでは語り草になっている「スクープ」が掲載される。
1面題字の横に「PL桑田独占取材? 早大進学か」の見出し。3面の見出しは「桑田コイコイ 9月21日 本誌が偶然接触!」。桑田真澄投手と菅井暢浩編集長が握手している写真がある。
9月21日の六大学リーグ戦、早大の初戦、東大1回戦、桑田投手がリーグ戦観戦に神宮を極秘に訪れていた。野球班はゲーム後のいつもの取材をしつつ桑田と接触。近くの喫茶店に桑田ら一行を招き入れ独占取材に成功したのである。
夏の甲子園で優勝し進路が取りざたされ、本人は「進学希望でしかも早大が意中である」と一般マスコミは伝えていた中でのリーグ戦観戦だった。
当時、2年生で野球班だった清水岳志が振り返る。