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「サッカーはベテランですけど、大学では新人教員」元なでしこ代表・安藤梢が見つけた“最高の実験台”…40歳の今も若手と競える理由とは?
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byURAWA REDS
posted2022/11/04 17:00
40歳を迎える今季も10番として存在感を放つMF安藤梢(浦和)。初代王者となったWEリーグカップでも決勝戦(10/1)でもゴールを決めている
鮫島彩や岩清水梓、近賀ゆかりら現役としてプレーする選手もいるが、エースの澤や大野、宮間、海堀あゆみはすでに現役を引退。最近、妊娠を発表した丸山桂里奈はタレントとして大活躍中だ。
「澤さんはメンタル的にも『チームが勝てる』と思わせてくれる特別な存在でした。チームが少し劣勢になったときに、相手のエースからボールを奪ってスイッチを入れてくれたり、苦しいときにゴールを決めてくれる、特別な力を発揮してくれた先輩。今も『あんなふうになりたいな』と憧れる存在です。
桂里奈はあれほど芸能界でブレイクするとは思っていなかったですけど(笑)、素のままで活躍している姿を見て、同級生としてうれしいです。また違う競争の激しい世界で生きている姿を見ると、『やっぱりメンタルが強いな』と感心しますね。桂里奈は代表ではスーパーサブ的な存在で、試合では残り5~10分で途中出場ということも多かったんです。先発で出場したいという選手が多いなかで、『スーパーサブが自分だ』と、自分の役割にフォーカスしていました。一度、後半の頭から途中出場した試合があったんですが、試合後、『今日はちょっと(出場時間が)長かったな』と話をしていたので、“そんな考え方もあるんだ!”と衝撃を受けたことをよく覚えています(笑)」
「一度も引退を考えたことはない」
さまざまなキャリアを歩む仲間たちの一方、セカンドキャリアの難しさを感じるニュースも聞こえる。かつてW杯決勝で対戦したアメリカ代表のレジェンド、FWアビー・ワンバック(42歳)は2016年に飲酒運転で、同GKホープ・ソロ(41歳)は公務執行妨害、飲酒運転の疑いで逮捕された。海外には波乱の人生を送る選手も少なくない。
安藤自身も「30歳を過ぎたら引退だと思っていた」と笑うが、40歳となった今「たった一度も引退を考えたことはない」とキャリアを振り返れるのは、自分自身が“最高の実験台”であることに気づいたからだろう。もう1つの“顔”である研究者という一面を見出したことは、自身をポジティブな方向へと導いている。
「一度、体力的に落ち込んだときもありましたが、『こんなトレーニングしてみたら戻るかな?』と新たなことにトライしたら、コンディションがぐんと上がったんですよ。試合に出られなくなったら、ネガティブになるよりも燃えてくるタイプ。見返してやるんだって(笑)。自分のなかで結果として示せるかどうか。こんなにも刺激的なチャレンジはないですよ。サッカーの魅力だと思っています」
何度も世界の壁を痛感し、「自分がやっていることは正しいんだろうか」と立ち止まることもあった。それでも絶対に成し遂げるという強い想いや信念によって「世界一」を実現した。
40歳という年齢にとらわれず、自分自身にフォーカスする。世代を代表するアスリートとして、安藤はピッチ内外でこれからも存在感を示していく。
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