プロ野球亭日乗BACK NUMBER
村上宗隆の”大記録”を止めた巨人・菅野の「ここしかない一球」インハイに投じた152キロのストレートに絶好調の怪物は…
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2022/09/03 11:02
15打席連続出塁がかかった村上だったが、巨人のエース・菅野と対戦した1打席目で捕邪飛に終わり記録が途切れた
ヤクルト戦では立ち上がりから150キロ台のストレートを軸に、全盛期の威圧的なマウンドさばきが復活していた。先頭の塩見泰隆外野手をカウント1ボール2ストライクから137キロのフォークで空振り三振にしとめると、続く2番のパトリック・キブレハン外野手もこれまた150キロ台の真っ直ぐから最後はフォークで空振り三振。そして3番の山田哲人内野手を歩かせて迎えたのが、あの村上の第1打席だった。
そこには、もはや不振に苦しんできた菅野の姿はなかった。
小細工は必要なかった。しっかりと投げなければならない真っ直ぐを内懐に投げ込む。自分を疑うことなく、普段以上にそのことだけに集中できたのも、村上という打者がいたからだった。
村上宗隆という規格外の打者をどう抑えるか
強大なライバルの存在は選手を育てる。
村上宗隆という規格外の打者の出現は、菅野だけではなく、セ・リーグの投手たちのレベルアップに必ず結びつくはずだ。
村上をどう抑えるか。
いますべてのセ・リーグの投手たちはその命題に挑んでいる。若い投手たちは畏怖しながらも、そのことを常に考えながらブルペンで投げ込み、力を磨き、対戦を待つ。そして菅野のような各チームのエース級の投手たちは、自分のプライドだけではなく、村上を抑えることがチームの浮沈を握ることを意識しながら、持てるすべての力でこの怪物封じに挑む。
一球の失投も許されないという投手の集中力と、自分のポイントにきた球は一球たりとも逃さないという村上の集中力がぶつかり合う。
だから背番号55が打席に一歩足を踏み入れると、スタジアムは異様な緊張感に包まれるのである。
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