プロ野球亭日乗BACK NUMBER
村上宗隆の”大記録”を止めた巨人・菅野の「ここしかない一球」インハイに投じた152キロのストレートに絶好調の怪物は…
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2022/09/03 11:02
15打席連続出塁がかかった村上だったが、巨人のエース・菅野と対戦した1打席目で捕邪飛に終わり記録が途切れた
前カードの2位・DeNAとの直接対決で、村上は3試合で11打数9安打、通算150号を含む4本塁打で9打点と大暴れした。第1戦の第3打席から14打席連続出塁して2013年に広島・広瀬純外野手が記録した15打席連続出塁のプロ野球記録にあと1と迫り、連続打数安打も9としていた。
バットを振ればスコアボードの「H」マークが点灯し、少しでも甘く入ればスタンドまで持っていかれる。まさに村上はゾーンに入った状態でこの巨人戦を迎え、初戦でぶつかる巨人の“エース”を相手にどこまで記録を伸ばせるのか。そこに注目が集まった対戦だった。
だが記録は第1打席であっさり止められた。
村上の第1打席に菅野が投じた”一球”
多くの評論家が絶賛した第1打席の菅野の投球はたった1球である。
2死一塁から投じたのはインハイへの152キロのストレートだった。村上を抑え込むには、どれだけ内角を厳しく攻めて、その残像を活かしながら配球を組み立てていけるかの勝負になる。
だからこそ、その日の第1打席の1球目に菅野と大城卓三のバッテリーはこの球を選んだはずだ。ただ一方の村上もまた、そんなことは百も承知でインコースを意識して立っていたはずである。
要は村上が待っているところに、あえて飛び込んでいったインハイのストレートだった。
だから村上も1球目から迷わずバットを出した。
しかし「ここしかない」という高さとコースに投げ込まれた威力ある真っ直ぐに、さすがの村上も押し込まれた形で打球は三塁側のファウルゾーンへと上がった。それを大城がキャッチして、軍配は菅野に上がったのである。
そして3回の第2打席は、一転して外中心の配球。菅野も150キロ台のストレートを連発して、最後はフルカウントとなった7球目のインローへのカットボールが外れて村上が一塁に歩いた。