プロ野球亭日乗BACK NUMBER
村上宗隆の”大記録”を止めた巨人・菅野の「ここしかない一球」インハイに投じた152キロのストレートに絶好調の怪物は…
posted2022/09/03 11:02
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
KYODO
打席に立つごとに、これだけグラウンドを緊張感に包む選手はいない。
18年ぶり、史上最年少での3冠王にひた走るヤクルト・村上宗隆内野手だ。対戦するどの投手たちも村上が打席に一歩足を踏み入れると、一球の失投も許されないと集中力を高めているのが分かる。
そんな村上の凄さはスイングスピードの速さ、圧倒的な飛距離、広角に本塁打を打てる技術にあることはいうまでもない。それだけではなく打てるポイントの広さと、そのポイントを外れた球には決して手を出さない選球眼の良さがある。
これだけ打ちまくれば当然、対戦する投手は警戒して「フォアボールでもよし」という配球でボール気味の球で攻めてくる。
ただ好調な時ほど、そこには落とし穴がある。
「自分の調子がいいと何でも打てるような気になってついついボール球に手を出してしまう。たまたまそれがホームランになったりすることもあるけど、結局、ボール球に手を出すとどこかでフォームを崩す原因になっていく。絶好調でもどれだけ我慢してボール球を見極められるか。そこが大事だと思う」
こう語っていたのは元ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜さんだった。
その見極めをしっかりして、自分のポイントにきた球を逃さず叩ける。ミスショットが少ないのも、村上がここまでの数字を残してきている理由だった。
ヤクルト・村上vs.巨人・菅野
だが、そんな怪物の存在は、対戦する投手たちにも大きな刺激となって波及効果を及ぼしている。そのことを実感したのが8月30日の巨人対ヤクルト戦で実現した、村上と巨人・菅野智之投手との3打席だった。