プロ野球亭日乗BACK NUMBER
村上宗隆の”大記録”を止めた巨人・菅野の「ここしかない一球」インハイに投じた152キロのストレートに絶好調の怪物は…
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2022/09/03 11:02
15打席連続出塁がかかった村上だったが、巨人のエース・菅野と対戦した1打席目で捕邪飛に終わり記録が途切れた
第3打席は村上が左方向に打ち返すも…
6回1死から巡ってきた第3打席も菅野に軍配が上がる。この打席では初球からスライダー、ストレート、カーブと3球続けて内角が続いた後の外角高めの真っ直ぐを村上が左方向に打ち返したが、飛距離は伸びずに平凡な左飛で終わった。
計3打席で2打数無安打1四球。菅野は7回108球を投げたところで降板した。試合は延長戦の末11回にヤクルトが2点を挙げて勝利したが、村上と菅野の対決は、菅野に軍配が上がった形となったわけである。
ただこれだけの菅野のピッチングを引き出したのは、村上という打者の存在が大きく寄与していることも忘れてはならないだろう。
昨年から度重なる故障に苦しむ巨人のエース。全盛期の圧倒的、支配的なピッチングが影を潜め“らしさ”を失ったように見えるマウンドが続いていた。
3度の抹消を経てーー菅野の復活劇は本物か?
そして今季も――。
開幕から、どこか物足りない内容のままに新型コロナウイルスへの感染も含めて3度の抹消を経験。ようやく8月16日のDeNA戦で29日振りに1軍マウンドに戻ってきた。
しかしそのDeNA戦はコロナ明けもあり、真っ直ぐの走りはもう一つだった。結果として相手エースの今永昇太投手との投げ合いに敗れ、6回3失点で今季6敗目を喫している。
ただ復帰2戦目となった23日の中日戦では、本来の姿に近い投球内容を披露している。8回110球を投げて2安打無失点で7勝目。何よりこの試合では真っ直ぐに力があった。
序盤から球速も150キロ台を連発し、ストレートの質が戻ってきた。真っ直ぐがしっかりしたことでカットボールやスライダー、フォークという他の球種の威力も取り戻してきているように見えた投球内容だった。
だからこそ、だ。
その復活劇が本物かどうか。その試金石となったのがこの村上との対戦だった。もちろんこのハイレベルな怪物の進撃を止めることの難しさを菅野も知っている。それがいい意味で、この試合に入っていく集中力を普段以上に高めることにもつながったはずである。