「たとえば、ブルペンのピッチング練習に審判役の人間が付いて、1球1球ジャッジしてあげれば、練習の緊張感も上がるし、実戦の状況に近い練習ができるし、投げたボールの答え合わせもできますよね」

　まったく同感。投手と捕手だけで差し向かいの投球練習など、ボール使った筋トレみたいに見えることもあったり。

「僕はプレイヤーとしてはチームの役に立たれへんけど、審判役として、精度の高いジャッジとルールの知識を提供することで、結構、チームの戦力になれてるんやないかな……そういう自負はあるんです。試合形式の練習って言いながら、肝心なところで、ルールをあいまいにしたまま流してることって、ありませんか？　そんなんやったら、実戦に直結した練習になれへんし、公式戦レベルのストライクゾーンを普段の練習から実感していれば、追い込まれてからも余裕を持って打席に立てますし」 

　現在、高校2年生。この先、一生懸命勉強して、できれば東京六大学か、東都六大学に進み、これまで磨いてきた「特殊技能」でチームに貢献したら、リーグの審判員として働きたい。さらには、高校野球でもジャッジを振るいたい。牧野君には、明確なビジョンがある。

　そんなに真剣に審判の道を志しているのなら、プロ野球の審判は視野にないのか？

「僕、背が低いじゃないですか……」

　現状、160cmにちょっと足りないぐらいだという。

「はっきりした規定があるかどうかわかりませんけど、プロ野球の審判の方って、みんな大きいですよね。やっぱり、プロ野球はショー的な要素がありますから、見映えのする背の高い人のほうが……」

　牧野君、珍しく弱気なのだが、あの舞の海だって、頭にシリコン入れて新弟子検査通ったのだ。

　一念、岩をも通す……である。この牧野君なら、どんな規定があったとしても、意外と難なく突破してしまうような気がしてくる。

＜後編へ続く＞

#2に続く

「ピッチャーかわいそう」批判も…夏の甲子園で衝撃だった24年前“延長15回サヨナラボーク”、現役高校球児（審判志望）は「素晴らしいです」