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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
高校野球でも深刻化する審判の“なり手不足”問題「ボク、なりたいんです!」京都の強豪野球部・高2球児はなぜ審判を目指すのか?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2022/07/18 11:01
各地で高校野球の運営に欠かせない審判員の不足が問題になっているという。そんななか筆者は「どうしても審判になりたい」という高校2年生に出会った(写真は2019年のセンバツ)
「まず、2人制をマスターせよ!」
それが、師匠から課せられたミッションだった。アマチュア野球の審判は、通常「4人制」。球審に3人の塁審で、ジャッジを行うが、2人制は塁審が1人になる。
実際の「2人」の動きを説明すると、パターンが多すぎてキリがない。基本的な動きの一例を牧野君に挙げてもらうと、
「走者なしの場面では、僕、つまり塁審は一塁ベースの後方に立ちます。ここで長打が出た場合、塁審はただちにマウンドと一塁ベースの中間あたりに移動しながら、打者走者の一塁触塁を確認して、二塁ベースないしは三塁ベースに向かいます」
とうとうと、よどみない語りが続く。 理解できているからこその、腰の据わった語りだ。
「ここからが難しいんです。打球の具合によって、二塁打になるのか、三塁打になるのか、とっさに判断して、どちらかのベースに直行する。外野からの返球のタッチプレーのジャッジをしなければならないので、どっちに行くにせよ、打者走者より僕のほうが先にベースに着いてないといけないので」
つまり、牧野塁審は、打者走者を塁で待ち構えていなくてはならない。大変な瞬間的判断力と運動量……ラグビーのレフェリーの動きが、一瞬、頭をよぎった。
「プレーが始まってから動いたんじゃ、とても間に合いません。次のプレーを予測して、何パターンか頭に想定を作って動く面白さって言うんですか……マニュアルはもちろんあるんですけど、実際は球審と塁審2人のとっさの連携ですね。『打球オッケー!』に『ランナー、オッケー!』で応えるみたいな」
日本野球連盟公認の野球規則として、2人制審判のマニュアルがあるそうだ。ちなみに、牧野君所有のマニュアル本には、無数の付せんが立てられ、すでに、ハリネズミのようになっているという。
「プロ野球の審判は?」「僕、背が低いじゃないですか…」
「審判同士のサインあるの、知ってます? ここ、インフィールドフライあるよ……だったら、自分の胸を指差して、了解なら、グーで手のひらを上から2度トントンとか」
そんな「審判よもやまばなし」も、知らない話だから楽しい。
「僕の場合は、紅白戦や試合形式のバッティング練習で球審やらせてもらって。ルール的にややこしい場面があると、上羽(功晃)監督も必ず僕に訊いてくれて、僕の答えに納得してくれて。そういう意味で自分の存在感とか、存在意義みたいなものを見出だしながら頑張れてますけど、なんか高校野球って、ちょっと勿体ないようなとこ、ありませんか?」
おっとりとした口調で、はっきりとした内容の話ができる。