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「もう全部終わった」失意の東京五輪落選を救った妻の言葉…“日本のミドル、なめんなよ” ブラン監督も絶賛する202cm高橋健太郎のブロック
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2022/07/13 06:00
202cmのミドルブロッカー高橋健太郎(27歳)。ブラン監督も信頼を寄せる高いブロック力は、五輪メダル獲得のカギを握っている
東京五輪でベスト8進出を果たした男子バレー日本代表は、今季から前コーチのフィリップ・ブランが監督となり、発足時からブロックの強化を大きなテーマに掲げてきた。
手の出し方やタイミングといった個々の技術から、後ろに入るレシーバーとの連係…「ディフェンス力を上げる」となれば、まずレシーブと考えられがちだが、どれほど優れたレシーバーとて、軽く100キロを超える強打を拾うのは容易ではない。
ブロックがどこに跳び、どのコースを防ぐか。ブロックは戦術、戦略を立てるうえで不可欠な要素になる。そこでキープレーヤーとなりつつあるのが高橋だ、と言うのはリベロの山本智大だ。
「大抵の場合、ここで跳ぶ、ここを塞ぐと決めていても追いつかなくて抜けてくることが多いんです。でも健太郎は横の移動が速いし、手をパッと出してレシーバーがいないところは確実にタッチを取ってくれるので、後ろに入っていても拾いやすい。ブロックは止めるだけがすべてだと考えている人も多いと思うんですけど、止めても1点であるように、いいタッチを取ってくれてから切り返して攻撃を決めるのも同じ1点。今のチームはもちろん、Vリーグも含めた日本選手の中で、ブロックの役割を一番わかりやすい形で示してくれているのが健太郎だと思います」
日本にとって積年の課題であるミドルブロッカーで、世界と堂々渡り合う選手の覚醒――。ドイツ戦で両チーム最多の6本のブロック得点を叩き出した高橋を、ブラン監督も称えた。
「健太郎の武器はブロック。ベストスキルの1つであり、彼のブロック力を非常に買っていますし、ネーションズリーグ前のブラジルとの親善試合でも(ドイツ戦と)同じような活躍を見せてくれました。彼がいることで、特にサーブで崩した時のブロック力がチーム全体としても向上した。チームとして(1試合で)10本のブロックポイントを取ることなど、2年前には考えられないことでした」
“日本のミドル、なめんなよ”
ネーションズリーグの開幕直前に、新型コロナウイルスへ感染した影響で筋量も落ち、まだ体調は万全ではなく「やっと、やってる感じ」と苦笑いを浮かべる。だが、以前なら開幕に出遅れ「せっかくのチャンスを無駄にした」と落ち込んでいたであろう状況も、「ボチボチ頑張ります」と言えるぐらい、動じなくなった。
「前までは、自分のイメージに身体や技術が追いつかなくて、迷ったりしていたんですけど、今は身体が思ったように動くし、できることがわかってきた。だから、うまく行かなくても悩まない。あの感覚がつかめたから、不安はないんです」
次はどんなプレーで会場を沸かせるのか。世界の猛者と渡り合う姿を想像するだけで、見る者はもちろん、誰より高橋自身が思うはずだ。
やめなくて本当によかった、と。
まだまだ、伸び盛り。「日本のミドル、なめんなよ」と見せつけるのはこれからだ。
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