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「もう全部終わった」失意の東京五輪落選を救った妻の言葉…“日本のミドル、なめんなよ” ブラン監督も絶賛する202cm高橋健太郎のブロック
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2022/07/13 06:00
202cmのミドルブロッカー高橋健太郎(27歳)。ブラン監督も信頼を寄せる高いブロック力は、五輪メダル獲得のカギを握っている
202cmのミドルブロッカーである高橋が、最初に脚光を浴びたのは2015年。石川祐希、柳田将洋、山内晶大と共に次世代を担う注目選手として取り上げられ、数多くのメディアを通して露出の機会が増えた。
もともとサービス精神旺盛で、取材のたびに次々と学生時代のエピソードが飛び出す。
野球少年だった高橋が高校からバレーボールに転向すると決めた際に短パンの短さに驚愕した話や、試合時の判定に感情が抑えきれず、公式戦で泣きながら審判台へ上がろうとしたところ、スタンドから降りてきた父に力ずくで抑えられた話。情景が浮かぶ話ぶりに何度も笑わされた。喜怒哀楽を隠さないストレートな振る舞いが、高橋の個性を際立たせた。
いつも陽気で明朗快活。その半面、自身も「めちゃくちゃ気にしい」と言うように、実は繊細で悩み始めたらとことん落ちる。
同時期に注目を浴びた石川、柳田、山内が日本代表での実績を重ねていく中、ケガも重なって思い通りのプレーができない時期もあった。日本代表や所属する東レアローズで少しずつ出場機会が増えても、素直すぎる性格が仇になり、ネット越しの挑発やヤジを真に受け、相手の術中にハマり、何もできない苛立ちを露わにしたことも一度や二度ではない。「もう僕なんか無理ですよ」と自虐的にこぼす弱音を何度も聞いた。
東京五輪落選「もう全部終わった」
そんな打たれ弱い高橋が、どれだけ折られても、落ち込んでも、這い上がってきた理由がある。東京五輪だ。
2013年、当時18歳の時に五輪開催が決定した。抜群のポテンシャルを評価され、U19日本代表にも選出されていたころだった。当然周りは「東京五輪で頑張れ」と期待を寄せる。バレーボールを始めた当初は将来像を描くことなどなかったが、頑張れば手に届くところに“五輪”があることは、高橋にとって何よりのモチベーションになった。
大げさではなく、自分がバレーボール選手でいる意味は「東京五輪に出場すること」。ただひたすら、そう信じて走り続けてきた。
だが、その夢は破れる。東京五輪の最終選考を兼ねた2021年ネーションズリーグ開催中の6月21日、発表された12名の中に高橋の名前はなかった。
「ホントに全力だったから、(メンバーが発表されてから)放心状態で。もう全部終わった、って思いました」