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「主将としての優勝を諦めていない」胃がんステージ4告白の藤井直伸(30)が前を向く理由…妻・美弥さんも「ここからがまた2人の始まり」
posted2022/03/02 11:04
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
YUTAKA/AFLO SPORT
2月27日、その日行われたVリーグ男女のすべての試合が終わる頃だった。
男子バレー日本代表として東京五輪に出場し、Vリーグ男子東レアローズに所属する藤井直伸(30歳)が、欠場が続いていた現在の状況を自身のInstagramで発表した。
「この度、昨年末の試合から目の不調を感じており、なかなか症状が改善されず、様々な要因を探るべく検査入院したところ、僕の体に胃癌が見つかりました。目の症状は胃癌が脳の方にも転移していることが影響しているみたいです。転移は複数ある可能性があるとのことです。以上のことから[胃癌 ステージⅣ]と診断されました事をご報告いたします」(本人Instagramより)
1月8日のJT広島戦での出場を最後に、22日のVC長野戦以降はベンチからも外れていた。特に2月5、6日のサントリー戦は「東北で試合をするのが楽しみだし、やっと宮城で試合ができるのが本当に嬉しい」と笑顔で話していた初の地元凱旋となるはずだった試合。チームに同行しないことが事前に発表された頃から、“目の不具合”がどれほどの症状なのかと案ずる声が多かった。
しかし、そこに綴られていたのは、誰ひとり想像すらできなかった現実だった。
仲間たちからの「待っている」
発表を受け、選手や関係者、バレーボールファンに留まらず、現役選手の「胃がん公表」というニュースに、多くの人々がショックを受けて言葉を失っただろう。
ただ、その中で、誰より先に前を見ていたのが、他ならぬ藤井自身だった。
インスタグラムの最後も「一回り大きな人間になって帰ってきます!!」「強い気持ちを持って頑張ります!!」と力強い言葉で結ばれていた。その姿勢に、チームメイトや大学時代の同期、先輩、日本代表で共にプレーした面々もそれぞれがSNSを通して「共に戦う」「待っている」と言葉や思いを寄せる。
誰からも愛される藤井の人柄が垣間見える、何よりの証でもあった。