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球体とリズムBACK NUMBER
〈マドリーCL14度目優勝→守備優位時代に?〉最新戦術でなくても「今日は誰にもゴールを奪われない」 神セーブ連発クルトワが豪語したワケ
posted2022/05/29 17:02
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Mutsu Kawamori
「昨日(決勝前日)の記者会見で僕はこう言った。レアル・マドリーが決勝に進めば、いつもマドリーが勝つと。すると、(そんなことを言った)僕が負けるに決まっているとするツイートをたくさん見た。でも実際には逆のことが起きたね」
今季のチャンピオンズリーグ決勝で、マンオブザマッチに輝いたマドリーの守護神ティボー・クルトワは、そんな風に大一番を振り返った。筆者と懇意にするベルギー人記者が、「自らを世界一と考える自信の持ち主」と評するGKらしい口ぶりと言えるだろうか。ただこの日の活躍を見れば、そんな言葉にもすんなりと納得する。
9つの枠内シュートすべてをクルトワが防いだ
リバプールの放ったシュートは23本、うち9つが枠内に飛び、そのすべてを彼が防いだ。16分、モハメド・サラーの至近距離のシュートを左手で弾き出すビッグセーブを決めると、「今日は誰にもゴールを奪われないと感じた」と言う。
さらにその5分後には、サディオ・マネがボックス内で守備陣をかわして放った強烈なシュートにも、信じがたい反応で触れてポストに逃れた。クルトワ本人は、これがこの日のベストセーブだと語ったが、後半にも2つ、目を疑うような守りを披露している。
69分──ビニシウス・ジュニオールの先制点から10分後──には、右からのクロスにファーサイドのジョタが頭で折り返し、再び逆のポストに大きく揺さぶられた。そこにサラーが詰めようとした時、万事休すかと思われたが、これにもクルトワが立ちはだかった。
そして82分には、サラーが完璧なトラップからDFをかわし、ボックス内から鋭い一撃を見舞ったものの、またしても驚異的な反射神経でゴールを許さなかった。
今大会での61セーブは途方もない数字
手垢のついたレトリックながら、“神がかり”と表現するほかないようなクルトワの働きと守備陣の奮闘により、ここまでの12試合で30得点を挙げてきたリバプールを無失点に抑えた。こちらも古くから使われてきたスポーツ的修辞句である“虎の子の1点”を守り切ったわけだ──なにしろマドリーはこの試合で3本しかシュートを打っておらず、たったひとつの枠内シュートを得点に結び付けている。