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球体とリズムBACK NUMBER
〈マドリーCL14度目優勝→守備優位時代に?〉最新戦術でなくても「今日は誰にもゴールを奪われない」 神セーブ連発クルトワが豪語したワケ
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byMutsu Kawamori
posted2022/05/29 17:02
レアル・マドリーの守護神クルトワのセービング技術は、CL決勝の舞台でも圧倒的だった
8年前にアトレティコ・マドリーのGKとして決勝に出場し、マドリーに敗れたクルトワ──だからこそ冒頭の発言をした──にとっては、今回が初優勝ながら、トニ・クロースやルカ・モドリッチ、カリム・ベンゼマらに至っては5回目だ。この桁外れの経験が、さらなる好循環を生み出すのだろう。
ただし、身を挺した守備陣の健闘があったにせよ、指揮官のゲームプランが奏功したのも事実だ。前半はじっと耐え、後半に流れを引き寄せてから、そこで1点を仕留めて最高の栄誉に繋げたのだから。
欧州カップ戦の優勝チームと監督を見てみると興味深い
「あらゆる意味合いにおいて、我々がこの優勝にふさわしい」
アンチェロッティ監督の言葉に反論する人はいないだろう。飛びつきたくなるような新戦術や新語を用いなくても、強いチームは強いのだから。
さて、フットボールの歴史を振り返ると、攻撃的なチームと守備的なチームが交互に時代を築いてきたことがわかる。ただし近年のエリートレベルは攻守に能動的なチームが多く、彼らが切磋琢磨していくうちに、多くのチームがポゼッションやハイプレス、ショートカウンターなどを使い分けられる似た形に収斂されつつあるようだった。
だが今季の欧州カップ戦の優勝チームを見ると、そうとばかりも言えないようだ。
チャンピオンズリーグはアンチェロッティ監督のマドリー、ヨーロッパリーグはオリバー・グラスナー監督のアイントラハト・フランクフルト、そして初代ヨーロッパカンファレンスリーグを制したのはジョゼ・モウリーニョ監督のASローマ──いずれも守備組織の構築に長けた指揮官が率いるチームだ。
攻か守か、能動か受動か──寄せては返す波のような歴史はこれからも続いていくのだろうか。フットボールの未来がますます楽しみになるような決勝だった。<市場価格編につづく>
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