佐野は今でも他人から「すみません」と言われると戸惑うそうだ。

「すみませんなんて思わなくてもいいのに……って思っちゃいますね」

　その佐野が中井から一番怒られたのは返事の小ささだった。

「返事がちっさいって怒られたことを覚えています。今でも、同級生に冗談で『返事！』とか言われると、そのときを思い出します。よく怒られましたけど、野球では怒られたことはないですね」

「広陵のグラウンドが一番ジーンと…」小林誠司の回想

　巨人の小林誠司は広陵OBであると同時に、同志社大OBであり、日本生命OBでもあるが、高校には格別の思いがある。

「大学や社会人のグラウンドにも顔を出しますけど広陵とは全然違う。広陵のグラウンドが一番ジーンときますね。年末にくると、ああ、今年も一年が終わったな、みたいな。あのグラウンドには語りつくせないくらいエピソードがありますから」

　捕手の小林は高校3年生のとき、「嘘」をついて、こってり絞られたことがある。ある日の練習中、2年生のセカンドがカバーリングを怠った。中井が小林に、その確認を求めた。今、セカンドはカバーに入ってなかったよな、と。ところが小林は咄嗟に、後輩をかばった。その行為が逆鱗に触れたのだ。小林の回想だ。

「わしに嘘つくんか、そんなやつは一生、使わんって怒られて。ちょっと不貞腐れた感じで、はいって返事したんです。そうしたら、なんや、その返事は！　と……」

広陵高校時代の思い出を語る巨人の小林誠司（2019年）　©Kiichi Matsumoto

　中井は「怒りたいときに怒る」というタイプである。

「本当は、怒るときと怒らないときを使い分けられる監督の方が勝てると思うんです。タイミングを見てね。でも僕は試合開始1分前でも怒るときは怒る。このスタイルしかできないんですわ」

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