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湘南元守護神の秋元陽太が語る、GKと監督・コーチの人間関係「選手を守れないなら辞めますと言える指導者に」
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph byShigeki Yamamoto
posted2022/02/23 17:00
昨シーズン限りで現役を引退した秋元陽太。横浜FM、愛媛、湘南、FC東京、町田と5クラブを渡り歩いた経験を次世代に繋げたいと語った
そんな秋元が「感謝しても、しきれない」と話したのが、横浜FMで指導を受けた松永成立氏だ。
「(ドーハの悲劇を経験するなど、日本代表で活躍した松永氏は)様々な経験をしている分、言うこともすごく的確でした。GKを守ってくれるだけじゃなくて、ちゃんとダメだと言ってくれる時もある。覚えているのは、勝利した試合後の言葉。自分自身のパフォーマンスがそんなによくなかったのに、『お前はあまり良くなかったけど、日頃から(みんなが)お前の練習に取り組む姿勢を見ていたからこそ、今日の試合は勝てたんだぞ』と言ってくれたことがありました。(評価を言葉にできるところが)すごいなと思いましたね」
キャリアの中でGKコーチの両面を見たことで、プロの世界で指導する難しさを知った。そして、自分にできることと、できないことを鑑みて、指導をするなら子供たちに教えたいという現在の思いにつながっている。その一番の理由はやはり“GKの味方になってあげたい”から。
「やはり守ってあげたいですよね。GKは本当につらいけど、選手だけに責任を押し付けたくない。たとえば、収入源がコーチ業だけになってしまうと自分の職も大事になってしまうので守れない時が出てくる。それならば自分にできることを増やして、そういった状況が来た時に『選手を守れないなら辞めます』と普通に言えるようになりたい。
それにいろいろなことをしておけば、指導者として違った角度から言えるところもあります。サッカー以外のところで手に職をつけて、それプラス子供たちに指導していきたい。16年やれたからこそわかったことを子供たちに還元できるようにやっていきたいと思っています」
GKの喜びも苦しみも味わった16年。そして、たどり着いた先は、自分が苦しかった経験を後世に受け継がせないこと。仕事をしながら、小さな街クラブでの指導を始めていきたいという秋元は、GKを育てる環境を築いていくため、自分らしいスタンスで次のキャリアへ歩き出した。