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後任監督・鈴木桂治が語った井上康生への“本音”「スーパー目立ちたがり屋なんですよ」「運を引き寄せる力を持っている」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/12/29 11:07
柔道男子日本代表監督を務める鈴木桂治が“革命児・井上康生”を語る
鈴木 バズーカは無駄な時間とか、大嫌いなんですよ。柔道の会議って、だいたい長くて。休憩中、トイレで会ったら「桂治、やばいぞ。なんだこの時間。無駄だ」って。あとから関係者のグループLINEにも書き込んでいました。「私はいずれフェードアウトする人間なので言わせていただきます。こういうところは柔道界がまだ成長できるところなので、変えていきましょう」って。そのままバズーカはグループLINEから退会しちゃいましたけど。書き逃げです。でも、外部の人間で、今まで日本の柔道界にあそこまでストレートにものを言ってくれる人はいなかったと思いますよ。その功績は計り知れない。ブログか報告書に書いたんですけど、井上体制9年間のMVPは誰かと言ったら僕はバズーカだと思っているんですよ。
井上のことを「僕も認めてませんよ」
――康生さんは、そういう人材を見抜く目も持っていたのでしょうね。ただ、そうして、ある面では黒子に徹していた部分があるからでしょうか、今回のインタビューで吉田秀彦さんや山口香さんの言葉の端々から、康生さんのことをやや「認めていない感」が出ているように感じられたんですよね。先輩でもあるので、まだ選手時代のかわいらしい、ちょっと頼りない後輩像が残っているからでしょうか。
鈴木 僕も認めてませんよ、ぜんぜん。ははははははは。それも実力といえばそうですが、運もあったと思っています。東京オリンピックが無観客だったりとか。
――無観客はアドバンテージになりましたか。
鈴木 今回は100パーセント、いい方向に働いたと思います。選手もそうだけど、審判も動揺せず最後まで冷静にジャッジできた。あれが超満員でワーワーなっていたら、選手も審判も緊張しますから。静かなぶん、コーチの指示も通りやすかったですし。いろんなところにいい影響を及ぼしていたと思います。もちろん、大会が延期されたりとか他の苦労もあったと思うんですけど、トータルで見ると、いい風が吹いていたと思います。井上康生という男は、そういう運を引き寄せる力を持っているんですよね。
「康生さんって、スーパー目立ちたがり屋なんですよ」
――康生さんを9年間、間近で見ていて、同じ代表監督としてこれは真似できないなと思うところは何なのでしょう。