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後任監督・鈴木桂治が語った井上康生への“本音”「スーパー目立ちたがり屋なんですよ」「運を引き寄せる力を持っている」
posted2021/12/29 11:07
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Takuya Sugiyama
第6回は、引き続き現柔道男子日本代表監督・鈴木桂治の証言。14年の世界選手権で波紋を呼んだ「100キロ級の代表派遣見送り」、その真相とは。(全8回の#6/#5へ)
「100キロ級代表派遣見送り」の波紋
――2014年の世界選手権で、井上ジャパンを象徴する出来事がありました。今までそんなことなかったと思うのですが、100キロ級の代表派遣を見送りました。鈴木監督は当時、100キロ級と、100キロ超級の2階級を担当されていたわけですが、抵抗感はなかったのですか。
鈴木桂治(以下、鈴木) その前のドイツの大会で100キロ級の日本選手が負けたとき、康生さんに「100キロ級の派遣なしってありえますか」って聞いたんです。康生さんも、そうせざるを得ないかなという感じでした。それで、ひとまず100キロ級の代表選考を少し延ばしたのですが、それでも候補として推せる選手が挙がってこなかった。なので、強化委員長の斉藤(仁)先生ら委員会の主要な方々に「100キロ級は選考を見送ろうかと思います」と言ったら、斉藤先生が「前代未聞だぞ」と怒ってしまって。
「お前、どんな強化してきたんだ。コーチの責任だぞ」と言われ、僕も「クビにするならしてください」と言いました。それくらいの覚悟はありましたから。中には「今後、100キロ級は諦めたということでいいんだな」みたいなことを言っている人もいましたね。もちろん、(代表選手を)送ろうと思えば送れるんですよ。弱い選手を。でも、金メダルを取りに行っているのに、こいつは100パーセント取れないなと思っている選手を出場させる意味はないですから。
「代表クラスが負けから学ぶことはない」
――たとえ負けてもそこから得るものもある、という考え方はないのですか。
鈴木 ないですね。代表クラスになったら、負けは負け。それで学ぶことはもうない。わざわざ弱い日本を見せる必要なんてないですから。