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「嫌な予感はしてた…」桜庭大世はなぜグスタボと“血まみれの殴り合い”を選んだのか?「親父を見てるよう」桜庭和志と重なった、目が離せない魅力
posted2026/03/10 17:22
『RIZIN.52』でルイス・グスタボに敗れた桜庭大世
text by

橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
〈親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている〉
桜庭大世の試合を見ていたら、夏目漱石の『坊っちゃん』冒頭1行目を思い出した。
3月7日の『RIZIN.52』有明アリーナ大会。彼はセミファイナルに抜擢された。プロMMAキャリアわずか3戦(2勝1敗)にもかかわらず、だ。
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対戦相手も格上だった。ブラジルのルイス・グスタボ。18戦と試合数は大世よりはるかに上で、タイトルマッチの経験もある。新人時代、ヴァンダレイ・シウバに見出されてアンドレ・ジダ(HERO'S、DREAMで活躍した中量級ファイターでシウバの弟弟子)のジムに入門。そこからRIZIN参戦を果たした。
「僕の試合がセミで組まれたのは、父親とグスタボ選手、シウバ選手ありき」
大世ははっきりと言う。格闘技の道を選んだ時点で、桜庭和志という偉大な父の“七光り”が良くも悪くもついて回ることは覚悟していた。それを当然のこととして受け入れた。揶揄されることもあるが、チャンスだってもらいやすい。
マッチメイクに期待されたドラマ
今回のグスタボ戦、背景にあるテーマは明確だった。
“桜庭和志の息子vsヴァンダレイ・シウバの愛弟子”
桜庭和志とシウバはPRIDEでライバル関係にあった。シウバは桜庭に勝つことで一気にその名を高めたと言っていい。結果は3戦してシウバの3勝。だからグスタボ戦は“父親の無念を息子が晴らす”というドラマを期待されてのマッチメイクでもあったはずだ。
そうしたことに対して、大世はフラットなスタンスだった。肯定も否定もせず、ただ受け入れている。
「いろいろ妄想を膨らませて楽しんでもらえれば。父親がシウバ選手に3回負けて僕が敵討ちみたいな、そういうのは特に思ってないです。でも、そういうつながりみたいなのは面白いと思います」
格上であるグスタボとの試合を受けたこと自体が“無鉄砲”というわけではない。大世はデビュー戦でキャリアで大きく上回る矢地祐介をKOしているし、前戦ではボクシング出身の宇佐美正パトリックと打撃で渡り合った末、リスキーとされる足関節技(ヒザ十字固め)でタップを奪っている。


