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佐山聡「お前、俺の顔を殴ってみろ」“地獄のシューティング合宿”壮絶スパルタ特訓の知られざる全貌…「ウァ~ッ」「グアァ~」現地で聞いた“悲鳴”

posted2025/12/25 11:41

 
佐山聡「お前、俺の顔を殴ってみろ」“地獄のシューティング合宿”壮絶スパルタ特訓の知られざる全貌…「ウァ~ッ」「グアァ~」現地で聞いた“悲鳴”<Number Web> photograph by Moritsuna Kimura/AFLO

天才プロレスラーにして、総合格闘技のパイオニアでもある佐山聡。現在、世界中で使用されているオープンフィンガーグローブを考案した

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

PROFILE

photograph by

Moritsuna Kimura/AFLO

「精神的なこと、これも技術のうち」「こういう蹴りが抜きの蹴り。わかる?」――近年、芸人やYouTuberのモノマネの題材となり、注目を集めている佐山聡の“地獄のシューティング合宿”。34年前、その現場を泊まりがけで取材した記者が目の当たりにした壮絶な実態とは……。総合格闘技の夜明け前に滴り落ちた、血と汗と涙の内幕を現代に伝える。(全2回の2回目/前編へ)

じつは佐山聡も自身の顔を「殴らせていた」

 衝撃的なシーンが映像として残り、それが発掘されたことによって、佐山聡が指導する“地獄のシューティング合宿”は猛練習の典型として後世に語り継がれることとなった。

 しかし、映像に映っているのは合宿のほんの一部に過ぎない。泊まりがけで取材を敢行した筆者は、2日間にわたってさまざまな場面を目の当たりにした。なお、合宿初日の夕食はカレーライスだった。

 たとえば、佐山は合宿の目的を一通り喋った後、ある選手にこんなリクエストを出した。

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「おい、ちょっとお前、俺(の顔)を張ってみろ」

 やられていたのは合宿の参加者だけではない。佐山も自身を殴らせていたのだ。突如として双方の役割が入れ代わった瞬間だった。だが、いくら本人の指示とはいえ、憧れの佐山に手を出せる者などそうそういない。

 案の定、その選手はおそるおそる佐山の頬を撫でるかのような張り手を見舞っていく。ハエ一匹すら殺せないようなスピードの一撃を受けるや、佐山の顔色は瞬時に険しくなり、いまにも飛びかからんばかりの勢いで怒鳴りだした。

「思い切りやってみろ! やる気あるのか、この野郎!」

 気持ちを入れ替えた選手は、必死になって張り手を見舞っていく。

「10-6+2は?」「8です」

 すると、沸騰寸前の血液を瞬時に平熱まで下げたかのように佐山は声のトーンを変え、奇妙な質問を投げかけた。

「10-6+2は?」

 その選手は平然と答えた。

「8です」

 もちろん10-6+2は「6」に決まっている。そんなことは小学校の低学年だってわかるだろう。しかしその答えが「8」であろうと、異論を唱える者は誰もいなかった。かたわらで取材していた筆者も「そうだよ、8だよ」と妙に納得していた。

【次ページ】 「精神的なこと、これも技術のうち」名言の真意

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