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「人から(自転車を)盗むのをやめられなかった」40歳になった悪童イブラヒモビッチが深く語った“人生のあり方”

posted2021/12/11 17:00

 
「人から(自転車を)盗むのをやめられなかった」40歳になった悪童イブラヒモビッチが深く語った“人生のあり方”<Number Web> photograph by L’Équipe

4リーグで優勝経験を持ち、得点王5度のイブラヒモビッチ。いまだ衰えない40歳とは思えぬ肉体を披露した

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『フランス・フットボール』誌9月号の巻頭に掲載されているのは、ジョアン・タボー、トマ・シモン両記者によるズラタン・イブラヒモビッチのインタビューである。日本語に翻訳して一万字を超えるロングインタビューながら、サッカーに関する話題はほとんどない。イブラ(イブラヒモビッチの愛称)がCL優勝を果たせなかったこと、バロンドールを獲得できなかったことへの追及はあっても、ピッチ上に限らずピッチ外でも具体的なサッカーの話は出て来ない。筆者(田村)も数多くのインタビューを読み――とりわけFF誌やレキップ紙のもの――自身も多くのインタビューを手がけてきたが、初めて目にするタイプのインタビューである。

 では、いったいイブラは何を語っているのか。それは彼の内面についてであり、彼自身の人間観、世界観、サッカーと向き合う態度である。ひとりの人間――アスリートである以上に人間の内面をこれだけ深く掘り下げようとしたインタビューを筆者は他に知らない。それが成功しているかどうかは、読者の判断に委ねたい。ただ、FF誌も述べているように、イブラが『その外見とイメージの奥に潜む本音を赤裸々に晒した』インタビューであるのは間違いない。

 3回に分けて掲載するインタビューのまずは第1回から。(全3回の1回目/#2に続く・肩書や年齢などは『フランス・フットボール』誌掲載当時のままです)

(田村修一)

愚かだった少年時代

 この10月に40歳となったズラタン・イブラヒモビッチは、ACミランで延長戦ともいえる現役生活を送っている。そして今回はじめて、その外見とイメージの奥に潜む本音を赤裸々に晒したのだった。

――結局のところFido Didoは見つかりましたか(註:イブラヒモビッチは自伝『I AM ZLATAN』のなかで子供のときにBMX自転車のFido Didoを盗まれたことの影響を詳しく語っている)?

「僕が盗まれたやつは見つけられなかった。でもそれは、さんざん盗んだことへのしっぺ返しかも知れない。大好きな自転車で残念だけれど」

――もしも盗んだ人間が見つかったらどうしますか?

「彼には新しい自転車を買い与えて、自分のやつを取り戻すよ」

――自伝では自転車泥棒の話が多く出てきますが、あなたの人生の転換点になりましたか。虐げられる立場から、加害者の側に回ったと。

【次ページ】 遠くない引退後に残るもの

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