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「人から(自転車を)盗むのをやめられなかった」40歳になった悪童イブラヒモビッチが深く語った“人生のあり方”
text by
フランス・フットボール誌France Football
photograph byL’Équipe
posted2021/12/11 17:00
4リーグで優勝経験を持ち、得点王5度のイブラヒモビッチ。いまだ衰えない40歳とは思えぬ肉体を披露した
「いや、僕は若くて愚かだった。すべては生きるためにやったことだ。移動のために自転車が必要だった。盗むことでなんとか状況を良くしようとした。自分の自転車を盗まれたときも、人から盗むのを止められなかった。でもそれは、自分で買う金がなかったからだ。決して褒められることじゃないけど、生きていくためには仕方がなかった……。少しでもよくなろうと思ってそういうことをする、違うか?」
――今日ならば、ズラタン少年に与えるために、あなたはサッカーから何を盗みますか?
「何もない。彼にはただこう言いたい。『忍耐強くあれ』と。一生懸命に働くことだけが状況を改善する。僕もかなり努力はしたが、あまり忍耐力はなかった。すべてを短時間のうちに変えたかった。だからこう言うよ。『ズラタン、我慢しろ。このまま働き続けて自分を信じろ』と」
――あなたは忍耐をどこで身につけましたか?
「若いときにはとても難しい。僕のように経験を得ると、忍耐の大切さを理解できるが、粗野で野心に溢れ、エネルギーも有り余っていて強いモチベーションを持つ若者が、世界に出ていきたい、いろいろなことを学びたいと願っても簡単ではない。周囲に経験豊富な人たちがいて、冷静さを保てるように面と向かってアドバイスをしてくれない限り難しい」
遠くない引退後に残るもの
――現役を引退した後のズラタン・イブラヒモビッチには何が残りますか?
「わからないな。何かが残って欲しいけど。何か残るものがあったなら、僕もいい仕事をしてきたというわけだ。たぶん考え方じゃないかな。自分を信じること。自分自身であり続けること。何か考えることがあっても決して恐れないこと。常に精神をオープンにしておくこと……」
――あなたは過ちも犯しますか?
「毎日過ちだらけだよ。今、あなた方とこうして話しているのも大きな過ちだ(笑)!」
――私たちにとっても過ちかも知れません(笑)。
「誰もが毎日のように過ちを犯している。ただ、過ちがあるから僕らは優れた人格を得られるともいえる。完璧な人間なんてどこにもいない」
――では最も誇りに思えることは何でしょうか?