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「インスタの写真に悩む道化ではない」「では訊くが、愛とは何だ?」キャリア終盤のイブラヒモビッチがこだわる等身大の人生とは
posted2021/12/11 17:01
text by
フランス・フットボール誌France Football
photograph by
L’Équipe
ジョアン・タボー、トマ・シモン記者によるズラタン・イブラヒモビッチインタビューの第2回である。両記者が発する質問は、ますます鋭くなっていく。イブラ(イブラヒモビッチの愛称)がひとりのサッカー選手として、また人間として、何を考えて何を大事にしているのか。忖度など何もないストレートで挑発的ですらある追及の言葉に、答える側もはぐらかす余地がほとんどない。
驚くのは、イブラがすべての質問に真摯に答えていることである。しかも怒ってもキレてもいない。ナチュラルな傲慢さは感じられるかも知れないが、極めて自然体で話をしていることに驚きを禁じ得ない。例えば同じ質問に真摯に答えられるアスリートが、日本に何人いるだろうか……。もっとも日本の場合は、同じ質問ができるジャーナリストが何人いるかの方が問題かもしれないが。
事前に質問表は届けられてはいない。そんなものは必要ないとイブラ自身が語っている。では、イブラは、自らの内面――人生観、人間観、世界観をいきなり問われて、どうして真摯に答えたのか……。読者の皆さんも考えて欲しい。(全3回の2回目/#1、#3へ・肩書や年齢などは『フランス・フットボール』誌掲載当時のままです)
(田村修一)
言うなれば僕は自信家だ
――パリ・サンジェルマンではクラブを離れる際(2016年)に『僕は王としてここにやって来て、伝説となって去る』と語りましたが、あなたの後に伝説を継いでいる者がPSGにいますか?
「さっきも言ったけど、誰にも自分自身の歴史と物語がある。僕のPSGでの物語は僕自身のものだ。今は誰かべつの人間が、彼自身の刻印を刻むときだ。僕は自分の言葉を刻んだ。それが『僕は王としてやって来て、伝説となって去る』だった。誰も同じ言葉は繰り返せない。別の何かを探さなければならない」
――人生とは始まりと終わりのある物語の繰り返しでしょうか?
「常にそうだ。最も重要なのは、どうやってその物語を始めてどうやって終わらせるかだ。何かを成し遂げたら、それは人々の記憶に残る」
――人々の心に刻まれるのは、あなたには大事なことですか?
「いや。僕はいい仕事をしてチームに貢献するためにここにいる。勝利を目指してピッチの上で違いを作り出す。人々の記憶に残ろうとしてやってはいない。僕が彼らの記憶に残るのは、僕が何かを成し遂げたからだ。それ以外ではない」