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《ドラフト》「語学留学しようと」野球をやめる覚悟のスラッガーは、なぜ<中日6位>に指名された? スカウトが明かす決断の理由
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2021/10/22 17:03
中日ドラゴンズに6位指名を受けた福元悠真(大商大)。ケガに泣かされたが、持ち前のパワーと人間性が高く評価された
福元にとってドラフトで指名を受けた瞬間は、幸せや感動ではなく、新たな“覚悟”が生まれた時でもあった。大学4年間は、福元にとって苦い思い出の方が多かった。だが、決して回り道をしたとは思っていない。野球をやり切れたかと言われればそうは言えないが、ケガをしたからこそ思い知ったことは両手で抱えきれないほどたくさんある。
「この大学4年間は本当に濃かったです。野球でもそうですし、人に対してもそう。野球だけではなく、生き方や考え方など、人として学んだことが多い4年間でした」
ただ、なぜ指名がなければ野球を辞める覚悟をしていたのか。
「社会人野球の話もあったんですけれど、プロ1本で勝負したかったのが一番です。もしプロになれなかったら経営者を目指そうと思っていたんです。いっそのこと野球から離れて、海外に語学留学しようと考えていました」
ずっと目指してきた夢が叶わなかったら、きっぱりと野球は諦めるつもりだった。社会人や独立リーグなどでプレーすることは一切考えず、日本の野球に触れない場所で、人生のリスタートを考えていたのだ。
だが、野球の神様は福元を簡単に諦めさせなかった。
中日スカウト「ブライトや鵜飼とも違う」
担当の中日・山本将道スカウトは、指名の決め手となった理由をこう明かす。
「パワーですね。今、チームにはいないタイプですし、(1位指名した)ブライト(健太)や(2位指名の)鵜飼(航丞)とも違う。あれだけ飛ばす力があるのはとても魅力です。確かに今年は守備でアピールができなかったかも知れませんが、ケガも徐々に回復してきているようですし、守備は今後鍛えていけばいい。何より練習に取り組む姿勢だとか、ひたむきさも評価しています」
富山陽一監督も福元のそういった人間性に期待を寄せていた。
「今まで見てきた子の中でポテンシャルは十分あります。練習に対しては真面目に取り組むし、ここまでよくやってきてくれた。本当はケガなくやって来られたら状況は変わっていたかもしれませんが、そういう(真面目な)ところを見てくださった。これからが本当の勝負ですが、この子を取って良かったと思ってもらえるような活躍をしてもらいたいです」