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「何でもやります」大野は先発準備をしながら毎試合リリーフ待機、青柳、山崎も出番が分からないまま黙々と肩を作り続け…侍ジャパンリリーフ陣秘話
posted2021/08/13 11:03
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Masaki Fujioka/JMPA
日本球界悲願の金メダル獲得という大団円で侍ジャパンの戦いは幕を閉じた。
「選手の勝ちたい、金メダルを獲りたいという思いが結束していいチームで、いい試合ができたと思います」
チームを率いた稲葉篤紀監督がこう語ったように、24人の選手全員が結束して手にした栄冠。特に忘れてはならないのは、変則的な敗者復活戦方式を取り入れた特殊な大会形式もあり、バタバタだったブルペンの舞台裏だった。そこにはほとんど出番のない中でも、黙々と肩作りをしていざという場面に備えて調整をしていた投手たちの姿がある。そういう投手たちの働きがあったからこそ、この栄冠に辿り着いた。そう思わずにはいられなかった。
8月7日のメダル授与式で、亡きチームメイトの木下雄介投手に金メダルを捧げる姿が印象的だった中日・大野雄大投手も、そんな投手の1人である。
青柳の登板で、大野の出番はなくなるはずだったが……
当初の大野に託された仕事は、オープニングラウンドを2位か3位で通過した際のノックアウトステージ初戦の先発だった。しかしオープニングラウンドを1位通過したことで、ノックアウトステージ初戦の米国戦では、阪神・青柳晃洋投手と共に第2先発としてのリリーフ待機指令が出されていた。
この試合は楽天・田中将大投手が4回2死で降板。ワンポイントで左腕の岩崎優投手を投入して何とか2対3と1点差でこの回を食い止めた。
そしてその裏に同点に追いつくと、続く5回の頭から第2先発として起用されたのは青柳だったのである。
ところが青柳が米国打線に捕まり3失点し、再び追いかける展開となってしまったのだ。青柳が登板した時点で、第2先発の予定だった大野の登板は、普通はなくなるはずである。もしこの試合で負ければ、4日の敗者復活戦に回る事になる。すでに何度も投球練習もしていたので、そうなったときの登板に備えて心身のコンディションを整えて、この試合は見守ることになるはずだ。