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「何でもやります」大野は先発準備をしながら毎試合リリーフ待機、青柳、山崎も出番が分からないまま黙々と肩を作り続け…侍ジャパンリリーフ陣秘話
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byMasaki Fujioka/JMPA
posted2021/08/13 11:03
先発の準備をしながら、リリーフ待機で肩を作り続けた大野雄大。実際に投げたのは5試合で1イニングだけだった
しかし追いかける展開にベンチの動きは慌ただしくなった。しかも5回の裏に味方打線が1点差まで詰め寄り、なおさらブルペンの出入りが激しくなる。6回からの2イニングをソフトバンク・千賀滉大投手、そして8回はDeNAの山崎康晃投手がマウンドに上がって1点差のままつないでいるときだ。
大野に登板指令が下り、慌ててまた肩を作り直した
9回の米打線が3番のDeNA、タイラー・オースティン外野手を挟んで2番と4番の2人の左打者に回るために、急遽、残っていた唯一の左腕の大野に登板指令が下り、大野は慌ててまた肩を作り直した。
「臨機応変な感じでと言われていて、今日は初回からブルペンに入っていました。(9回のリリーフは)中日時代にありますし、何とか0点で抑えて貢献したいという思いでマウンドに上がりました」
大野は先頭打者に死球を許したが、言葉通りにオースティンを投ゴロ併殺、次打者を空振り三振に仕留めて完璧リリーフを見せた。その裏に打線が追いつき、延長10回タイブレークの末に準決勝進出を果たしたのである。
あるのか分からない試合の先発の準備とリリーフ待機
そしてこの試合の翌日にこの左腕に伝えられた次の予定は、4日の準決勝で敗れたときにある5日の敗者復活戦(準決勝)での先発だった。
あるのかないのか未定の先発ばかりの準備をしながら、その間にリリーフ待機もこなす。もちろん五輪という特殊事情を分かっている。巨人・中川皓太投手の辞退で左投手が2人しかいないというチーム事情も理解している。
「何でもやります」
建山義紀投手コーチに告げた言葉は、まさに大野の心意気であり、その心意気にチームはすがった。
あるのかないのか分からない5日の先発の準備をしながら、4日の準決勝の韓国戦でも大野はリリーフスタンバイもしていた。