野球のぼせもんBACK NUMBER
侍ジャパン“笑わせた”栗原陵矢「監督の赤いパンツのようにアツく行きましょう」 “まさかの”4位ホークスのカギを握る25歳
posted2021/08/13 17:03
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
JMPA
侍ジャパンが東京五輪金メダルをかけて決勝戦に臨むその直前。横浜スタジアムのダグアウトに、栗原陵矢の声が響き渡った。「日本」と大きく書かれた日の丸のハチマキを頭に巻いてチームを鼓舞したのだ。
試合前の円陣はすでに坂本勇人が行っていた。栗原の登場はその直後だった。みんながベンチに戻って腰を下ろしたタイミングを見計らって、おもむろにグイっと一歩前に出た。そして、帽子をとっていそいそとハチマキを巻き、気合を注入した。
「みなさん、赤い日の丸が見えますよね! そして、今日監督(が)はいてきました、赤いパンツ。あの赤色のように熱く今日行きましょうよ。そして、もう一つ僕調べました、『侍』。侍とは、自分の成し遂げたいことに、1分1秒魂をかけて、戦いましょう! 勝つぞー!」
威勢よく叫んだものの、チームメイトたちはにやにやと見つめるだけで反応はなし。ただ、栗原が最後に「うにゃ~」と気の抜けた声を漏らして“スベリ芸”を完成させると、侍ナインからどっと爆笑と拍手が沸き起こった。
これだけの大一番でもこんな雰囲気になれる。それが東京五輪を戦った侍ジャパンの一体感と強さであり、栗原のパフォーマンスはその象徴でもあった。
東京五輪での栗原といえば、準々決勝での延長10回無死一、二塁で始まるタイブレーク制に突入した後に見せた「代打送りバント」も本当に見事だった。栗原本人はおそらく手汗びっしょりで足だって震えていたに違いないし、見ている我々も同じようにハラハラドキドキしたシーンだった。だけど、あの声出しパフォーマンスの方が、筆者の心には刺さった。
明るく、楽しく、だけど野球は真剣に。
昨季打率.243→今季打率.278
その姿勢と大切さを、栗原はホークスでずっと学んできた。