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消えた「バルサのメッシ」という当たり前…放漫な経営が招いた悲劇で「メッシ」と「メッシのいないバルサ」はどこへ向かう?
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2021/08/09 11:01
再契約が濃厚とみられるなか、バルサの退団が決まったメッシ。21年間の蜜月に突如終止符が打たれた
レオは残留したがっていたし、我々も残ってほしかった
トリンコンや将来有望なカンテラーノをレンタルに出してはいるが、容量の軽い写真を2、3枚削除したところで、警告のサインが消えるはずもない。
一部ではスーパーリーグ構想を主導するバルサと、それに断固反対するラ・リーガとの確執が根底にあったとも噂されているが、その真相は現時点では定かではない。
いずれにしても、ジョゼップ・マリア・バルトメウ前会長の下での、無節操かつ放漫な経営によって招いた深刻な財政難で、首が回らなくなっているのは間違いない。そこにコロナ禍が追い打ちをかけ、バルサの台所は、いまや火の車どころか猛火に包まれている。
その代償として、メッシを失ったのだ。ラポルタはこう話している。
「レオは残留したがっていたし、我々も彼に残ってほしかった。だから、この状況には満足していない。レオはすべてに値する。しかし悲しいが、バルサの最善のためだった」
昨オフ、バルトメウ体制に不満を募らせ、退団の意向を示したメッシ。結局元の鞘に収まったが、その火種がまだ燻り続けていたのだと、そんなうがった見方もあるようだ。しかし、それが真実であるのなら、年俸の50%カットという、普通では考えられないような新契約条項を受け入れるはずもない。
長年カタルーニャの地で暮らしてきた家族もバルサ残留を望んでいたし、新シーズンは親友のアグエロとも一緒に戦える。バルサで可能なかぎりプレーを続けることが、彼の唯一の望みだったと考えるのが自然だろう。
ファンのバルサ離れが進む可能性も
とにかく我々は、この現実を受け入れなくてはならない。
13歳でカンテラに入団してから21年、2004年10月のトップチームデビューから17年。「バルサのメッシ」という当たり前が、このフットボール界からなくなるのだ。
もしかしたら、これを機にファンのバルサ離れやラ・リーガ離れが進むかもしれない。世界最高のフットボーラーの存在が、バルサを支持する動機づけになっていたファンは少なくないだろう。
ただ個人的には、今回の両者の別れを、残念には思いながらもポジティブに受け止めている。1年前のように、そこに憎しみの感情が渦巻いていたわけではないし、なにより、「メッシのいないバルサ」と「バルサ以外のチームでプレーするメッシ」への純粋な興味が先に立つからだ。