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久保建英「決めるとしたら自分」 吉田麻也「コンディションを100に…」頼もしい金メダルへの余白 冨安健洋のケガも“強くなる契機”に
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJIJI PRESS
posted2021/07/23 17:05
国際大会の初戦らしい難しい展開となったが、久保建英の決勝ゴールで勝ち点3を積んだことは間違いなく今後に生きるはず
「(南アフリカ戦では)コンディションを100に持ってきてないので、1試合やってかなり良い状態になるんじゃないかと。次のメキシコ戦は(グループステージ突破に向けて)カギになると思うので、良い状態で臨みたい」
ワールドカップで優勝を狙うチームは、大会初戦に照準を合わせないものだ。試合を重ねるごとに調子を上げていき、決勝トーナメントに入ってからが本当の勝負――。これは世界大会で頂点に輝くうえでの真理だろう。
日本にはワールドカップやオリンピックで勝ち進んだ経験が乏しく、ピークをコントロールする余裕もない。ベストな状態で初戦を迎え、しっかり勝利して勢いに乗る。これが、現実的な青写真だと思っていた。
実際、吉田自身も「初戦が大事」とことあるごとに話していたが、その大事な初戦にあえて100%の状態にしなかったのは、まさに優勝を狙えるチームの選手の調整法である。
余白のある状態で臨んだのは、それだけ自分自身と今のチームに自信があるからではないか。そんなことを感じずにはいられなかった。
前半の攻勢と無観客試合の影響
それにしても、いかにも"国際大会の初戦"といった内容だった。
南アフリカの組む5-4-1の守備ブロックに、日本はなかなか突破口を見出せない。それに加え、国際大会初戦の独特な雰囲気と緊張が、攻撃のリズムを狂わせた。吉田が振り返る。
「前半セーフティに行きすぎたかなと。ボールを大事にしすぎた感はありました」
日本に決定的なチャンスが訪れたのは、30分がすぎたころだ。32分に堂安律のパスから林大地がゴール正面からシュートを狙い、その1分後にはゴール左から三好康児がフィニッシュを放ったが、いずれも相手GKの好セーブに遭った。
もし、スタンドにファン・サポーターが詰めかけていたら、万雷の拍手の後押しによって日本のペースに拍車がかかり、南アフリカを精神的に追い詰めることができたかもしれない。だが、南アフリカが浮き足立つことはなかった。無観客試合の影響は、こんなところにも感じられた。