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「W杯で初めてPKを外した日本人」駒野友一がいま明かす南アW杯PK戦の真相…なぜ左上を狙ったのか?「映像をフルで見るのは初めてかもしれない…」
posted2026/01/29 17:35
南アフリカW杯の決勝トーナメント1回戦・パラグアイとのPK戦で外してしまい頭を抱える駒野友一。当初は“戦犯”とされることもあったが、誰が日本を代表するキッカーを責められよう
text by

松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
Naoki Nakanishi / JMPA
発売中のNumber1136号に掲載の[ベスト16突破のためのキー・ポイント]PK「W杯で決めきるために」駒野友一/南野拓実/横内昭展 より内容を一部抜粋してお届けします。
W杯で初めてPKを外した日本人
2010年6月29日。南アフリカ北部、プレトリアにあるロフタス・バースフェルド競技場に設けられた狭い取材エリアには、試合終了からパラグアイ人記者の興奮と日本人記者の落胆が充満していた。細くて短い通路に選手たちが姿を現すと、すかさず音声レコーダーを握る無数の腕が柵の向こうへ伸びた。
目の前にあったベスト8への切符を寸前で取り逃したにもかかわらず、日本の選手たちは意外なほど冷静だった。大会前の不振により、猛烈な批判に晒されながらも16強までたどり着いた安堵感もあったのだろう。遠藤保仁はいつものように淡々とゲーム展開を振り返り、中澤佑二は「帰ってカレーを食べましょう」と報道陣を笑わせた。
ただし、彼だけは様子が違った。すでに多くの選手がチームバスに乗り込んだ頃、「W杯で初めてPKを外した日本人」がミックスゾーンにやって来た。あのとき、筆者には訊いてみたい質問があった。
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〈なぜ、左上を狙ったのですか?〉
ゴールマウスの大きさは幅7.32m、高さ2.44m。その真ん中に、2m近い大男が立ち塞がる。そんな相手GKの手から逃れるために、最も成功の確率が高いシュートコースは左右の「上隅」だ。ただし、リスクもある。少しでもインパクトを失敗すれば、ボールは枠の外へと飛んで行く。
W杯という極限の舞台で、なぜ勇気と度胸が必要なあのコースに蹴る決断に至ったのか。その心の内を知りたかった。
しかし、報道陣の誰も声をかけることができなかった。俯いているのに、はっきりわかる。泣いて、拭ってを何度も何度も繰り返した駒野友一の顔は、あまりにもボロボロだった。
「お疲れさまです……」
振り絞った小さな小さな声だけを残して、勇気あるサイドバックはミックスゾーンを歩き去った。
PK戦の映像をフルで見るのは初めてかも
2025年師走、駒野が当時の心境を明かしてくれた。
「試合が終わって、ロッカールームに戻って、少しだけ落ち着いたんですけどね。犬飼さん(犬飼基昭、当時日本サッカー協会会長)が『お疲れさま。気にするなよ』と声をかけてくれて。それで、また涙が込み上げてしまった。このままミックスゾーンで立ち止まってもしゃべれないなと思って」

