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「ティキタカですらすでに過去になった」80歳にして意気軒昂のオシムが語ったEUROとサッカーの進歩
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by Takuya Sugiyama
posted2021/07/23 06:00
「サッカーを見られればそれで十分」と元気な様子のオシム。いまだにJリーグもチェックしている(2013年撮影)
ここまで私が見たのは好戦的なチームばかりで、そのこと自体が何かを語っている。ティキタカですらすでに過去になった。ボールをキープしすぎるのは魅力に欠けるからだ。サポーターもつまらなく感じてブーイングを浴びせ始めている。後方でボールを回しているだけでは面白みがない。
いくつかのチームは嬉しい驚きを与えている。ベルギーは強く、チーム構成を見る限りイタリアもレベルが高い。イタリアはタイトルから久しく遠ざかっているが、勝つだけがすべてではない。何よりもプレーが大事だ。
大きな驚きはない。たしかにサプライズはあったが、すべては予想の範囲内だった。W杯と比べたときにEUROは少し進歩している。レフリーの質も向上した。反則に対しより厳しい態度で臨んでいる。サッカーにとっていいことだ。ここまで大きな過ちはない。彼らが見逃していないからだ」
――ハンドに対してもそうです。
「うまくコントロールしている。だからデュエルも激しいがとてもフェアだ。見ていて気持ちがいい。サッカーがよりオフェンシブかつアグレッシブになった。美しくもある。
それで君は、食事以外では何をしているのか(笑)」
――あなたと同じで、食事をするかサッカーを見るかです(笑)。
クラブを見つけてくれたら真剣に検討したい
「君はそれほど大食いではないだろう。それでも何かをやるときにはしっかり食べないと。今の私に何ができるのか。もし君がクラブを見つけてくれたら真剣に検討したい。私もそうだがアマル(イビチャ・オシムの息子。サッカー指導者)にもだ。もの凄く優れたクラブでなくてもいい。そんなクラブは多くはないし、金銭的に余裕のあるクラブも少ない。仕事をする限り困難はつきものだ。ずっと家にいてテレビで試合を見るだけの状態は普通ではない」
――具合はどうですか。
「今は少しいい。新しい薬を飲み始めた。妻が私のために見つけてくれた。それを1日に3度服用している。それで少し症状を緩和している。膝の状態は前よりちょっとよくなった。少しだが歩けるようになった。それだけでも奇跡だ。今度はプレーを始めようかとも思っている(笑)。就任したクラブの選手たちが練習をあまりしないようなら、私も彼らの中に混じって一緒にやりたい(笑)」
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