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辛口キーンが「すべてを備える」と絶賛する20歳の逸材MF ノリッチの新戦力「スコットランド産イニエスタ」から目を離すな!
posted2021/07/23 17:01
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
2021-22シーズンの注目選手はノリッチの新戦力。そう言うと、首を傾げたくなる人が多いかもしれない。
1年でプレミアリーグに返り咲いたイングランド東部のクラブは、過去10年間で3度目の昇格となるが、降格も一昨季が10年間で3度目。英国人オーナーの下、移籍市場で無理をしない経営姿勢は戦力維持による1部早期復帰を可能にする一方、大型補強もないのでプレミア定着を難しくしてもいる。
クラブ史上最高となる移籍金額は900万ポンド(約13.5億円)台。昨季プレミア王者のマンチェスター・シティでは、歴代トップ50にも入らない金額だ。
“今夏注目”のビリー・ギルモアも、1年間レンタルでの獲得となる。
味方のために敢えて敵を引き付ける
しかし、チェルシーから借り入れた20歳のMFは最大級のタレントだと言える。国籍がスコットランドでなければ、イングランド代表を率いるガレス・サウスゲイト監督もギルモア中心のチーム作りを進めるのではないかと思えるほどだ。
55年ぶりの国際大会決勝進出に沸いたEURO2020で、優勝したイタリアとの差を端的に言えば「ゲームメイク巧者の有無」になる。攻撃的なチームとなって欧州の頂点に立ったロベルト・マンチーニが率いるチームには、ジョルジーニョやマルコ・ベラッティなど、タイトな状況でもボールを集め、かつマイボールを活かせるといった、ボールを支配して攻めるうえで重要な存在となるプレーメイカーがいた。
対して、サウスゲイトの手元は攻撃的MFが豊作ながら、プレーメイカーは育っていない。グループステージのスコットランド戦は、相手チームのアンカーを務めたギルモアの存在がスコアレスドローを演じさせたといっても過言ではない。
ゴールがなかった90分間でのワンシーンに過ぎないが、イングランドのプレッシャーを受けながらも胸トラップから縦にパスをつけたプレーは、試合のハイライトに数え上げられる。
距離を詰められても苦にしないというより、味方のために敢えて敵を引きつけるようにボールを受け、素早いターンや正確なタッチでパスを放つ隙を作るセンスとテクニックは、識者間で「ワールドクラス」とも言われている。