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「ティキタカですらすでに過去になった」80歳にして意気軒昂のオシムが語ったEUROとサッカーの進歩
posted2021/07/23 06:00
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Takuya Sugiyama
イビチャ・オシムに電話をしたのは6月22日の早朝、EURO2020グループリーグ最終戦でオーストリアがウクライナを1対0で下し、ラウンド16進出を決めた直後だった。オーストリア代表監督はフランコ・フォーダ。ドイツ人だがシュトルム・グラーツ時代にオシムの下でプレーし、2001年に現役引退した後もシュトルムに指導者として残り、2002〜03年、06~12年、14~17年の3度にわたり監督にも就任している。その後、2017年にオーストリア代表監督に就いてからは積極的に世代交代をはかってオーストリアの再生に成功し、オシムもその手腕を高く評価していた。
オシム本人とは話せなくとも、アシマ夫人にひとことだけ「おめでとうございます」と言おうと思いかけた電話を、夫人は即座にオシムに繋いでくれた。受話器の向こうのオシムは冷静で、むしろ私の方が少し興奮気味だった。オーストリアの好パフォーマンスに敢えて触れないのは、大会全体のなかでは突出しているわけではないという客観的な視点に立ってのことだろう。そのあたりがいかにもオシムらしい。
思いがけなく実現した電話インタビューを、前後編にわけてお届けする。(全2回の1回目/#2に続く)
元気だ。試合を見てれば不満はない
――元気ですか?
「ああ、元気だ。サッカーで何かあったか知らないがまあ悪くない。ただ試合を見ているだけだ。試合を見てさえいれば何も不満はない。ピッチで起こっていることを見られればそれでいい」
――素晴らしいサッカーだったし素晴らしい勝利でした(オーストリアがウクライナを1対0で破り、オランダに次ぐ2位でグループリーグ突破を決めた)。
「日本はどうなっているのか。代表はどうしている?」
――インターナショナルマッチウィークで4試合をおこない4連勝しましたが、対戦相手がセルビアを除いて……。