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【追悼】「リバプール復興の始まりはウリエの監督就任だ」名DFキャラガーが天国の名伯楽に捧げる秘話と「一生の思い出」
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph byGetty Images
posted2021/05/15 17:01
昨年末に他界したウリエ。リバプールのレジェンドがフランス人指揮官の思い出を語る
ある意味、ジェラールが完全にクラブを離れたことは1度もなかった。
プライベートで連絡を取り合っていた選手も多い。俺やスティーヴィー(・ジェラード)のようにね。後任になったラファにも、就任当初は舞台裏で力を貸していた。退任直後のEURO2004中には、試合会場でスティーヴィーの家族にラファを紹介していたよ。自分から監督の仕事を奪った男にだ! そういう人なんだよ。監督ではなくなっても、リバプールのためを思っていてくれた。
クラブを追われた監督が退任を求めた張本人と並んで会見
退任発表会見もよく覚えている。リック・パリー(当時のCEO)も同席していたんだが、あんな退任発表は見たことがない。今後も、あり得ないと思う。クラブを追われた監督が、退任を求めた張本人と並んで会見に臨むなんて……。品格と威厳を感じさせた2人の様子を見ながら、サポーターの1人として誇りを覚えたね。
リバプールの勝利を願う気持ちが変わることはなく、試合を観に戻って来たいと言っていたジェラールは、退任後の行動も発言通りだった。
あの優しい笑顔が懐かしいよ。一緒に思い出される、お馴染みの赤いマフラーも!
思い出の出来事は、(11時間に及ぶ)心臓の大手術で一命を取り留めた後、初めてアンフィールドのベンチに戻って来た日のことになるな(2002年3月19日、CLローマ戦)。ベンチに監督の姿がない試合が5カ月ほど続いていたが、いきなりジェラールが目の前に現れた。俺たち選手には知らされていなかったんだ。それが、試合の2、3時間前に突然。びっくりするやら、興奮するやらで、みんな『ジェラールが戻って来た!』って大騒ぎさ。
キックオフの前にトンネルから姿を見せると、相手の監督だったファビオ・カペッロとがっちりハグを交わして、スタンドからは大歓声が沸き起こった。最終的に2-0で勝利を収めて、準々決勝進出を決めた。
あの一戦は、俺のリバプール・キャリア最高のハイライトの1つでもある。その中心に、ジェラールがいてくれた。俺にとっては一生の思い出さ。
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