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日韓戦でモメた・燃えた日 加茂監督更迭&ハリル解任の引き金、カズの魂の一撃、オシム「本田もポリバレントに…」
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byTakuya Sugiyama/Kazuaki Nishiyama
posted2021/03/24 17:02
ハリルホジッチ監督やカズ、中山雅史らも日韓戦で燃えた
山口素弘の伝説ループ弾、しかしその後……
<名言3>
名波、中田の2人を潰せば、日本の攻撃は寸断できる。
(チャ・ブンクン/Number429号 1997年10月9日発売)
◇解説◇
「コーチの仕事を始めて30年が経ちますが、これだけの大観衆から応援を受けたのは初めてで感激しています。できましたら、勝って一緒に喜びたかったのですが、残念な結果に終わってしまいました」
1997年9月28日、フランスW杯アジア最終予選、日本のホーム国立競技場で行われた日韓戦後の加茂周監督のコメントである。
試合は67分、山口素弘の芸術的ループシュートが決まって日本が先制した。
全体を通じても押し気味で進めており、日本はついにW杯予選で「韓国の壁」を突き破る瞬間がきた。そう思ったサッカーファンは数多かった。いや、加茂監督らピッチレベルの指揮官や選手たちも同じ思いだったかもしれない。
では一方、敵将チャ・ブンクンはどのように考えていたのだろうか?
1点リードを奪われた直後、韓国側の“やり取り”
試合前から中盤のキーマンである名波浩と中田英寿を徹底的に“消す”ことを命じるとともに、試合中もこのようなやり取りをしていたという。
「1点リードされた時も私は落ち着いていました。ホン・ミョンボが『前に出てもいいですか』と尋ねてきたが、私はなだめました。落ち着きなさい。いつもの通りやれば逆転できるからと」
果たして、展開は一変する。秋田豊投入で逃げ切りに入った日本に対して、韓国は84分、87分と立て続けにゴールを奪い、スコアをひっくり返したのだ。
加茂監督はこうも振り返っている。
「ラスト10分、選手の足が止まってしまい、組織が乱れてしまいました。しかしまだ終わったわけではないので……」
そう、日本にとってのW杯最終予選はまだ序盤戦だった。しかし、このショッキングな敗戦で加茂周監督に対する逆風が強烈に吹くことになった。続くカザフスタン戦で終了間際に追いつかれてドローに終わり、「加茂監督更迭」のトリガーは引かれたのである。