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室屋成が語るドイツ移籍とFC東京愛。
「健太さんが“頑張って来いよ”と」
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byF.C. TOKYO
posted2020/08/17 08:00
ハノーファー移籍直前、インタビューに応じてくれた室屋成。FC東京での経験を心に刻んで、ドイツでの戦いに身を置く。
“心のストッパー”を外して不動の右SBに。
「プロに入ってから『自分の良さが出せてないな』と感じていたんです。それで『バランスを考えすぎた結果、ベンチになるんだったら、自分らしいプレーをしよう』って。『仕掛けまくって、それでもダメで、このチームを出て行くことになるなら仕方がない。考えすぎず、もう無心でプレーしよう』って」
“心のストッパー”を外した室屋は練習試合で4アシストをマーク。アピールが実って先発復帰したV・ファーレン長崎戦でもアシストを決めると、翌節の鹿島戦でくだんのスーパーゴールを決めるのだ。
その後、室屋はFC東京の右サイドで不動の存在となる。’17年12月のE-1選手権で初選出された日本代表においても’18年9月以降、常連メンバーとなっていく。
そんな選手がシーズン中に突然、いなくなるのだから、指揮官にとって相当な痛手だったに違いない。
長谷川監督からは「マジか!?」と。
室屋にオファーが届いたことを長谷川監督が知ったのは8月9日、セレッソ大阪戦を終えて帰京する最中のことだったという。
「聞いたときは、『マジか!? この時期に!?』という思いでした。寝耳に水じゃないですが、びっくりしました」
長谷川監督が驚くのも無理はない。なにせ、室屋にとっても降って湧いたような話だったのだ。
「正式にオファーが届いたのは、1週間ちょっと前くらいですかね。そこでチームに『行きたい』ということを伝えて。それから1週間ほど、強化部、監督と話し合って、行くことになりました」
主力である自分がシーズン中に離脱することがチームにとってどれだけ痛手か、理解していた。ましてや橋本拳人が1カ月前にロシアに旅立ったばかりなのだ。
監督に怒られても仕方ない――。室屋はそう思っていた。
ところが、指揮官の対応は、室屋の予想とは大きく異なるものだった。