Jをめぐる冒険BACK NUMBER
室屋成が語るドイツ移籍とFC東京愛。
「健太さんが“頑張って来いよ”と」
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byF.C. TOKYO
posted2020/08/17 08:00
ハノーファー移籍直前、インタビューに応じてくれた室屋成。FC東京での経験を心に刻んで、ドイツでの戦いに身を置く。
街も、チームの雰囲気も最高だった。
心残りはありますか――。そう訊ねると、間髪入れずに「やっぱりタイトルを獲れなかったことですね」と表情を曇らせた。
だが、FC東京で過ごした4年半が、何ものにも代えがたい日々だったことは間違いない。
「最高な時間でした。街も最高だし、チームの雰囲気も最高。ベテラン選手の若手に対する接し方だったり、FC東京の雰囲気が僕は大好きで。そうした中で4年半、100試合以上に出させてもらったのは、サッカー人生だけでなく、人生においても最高の経験ができた、という思いです」
振り返れば、生まれ育った大阪を離れて青森山田高の門を叩いたときも、プロからオファーを受けながら明治大に進学したときも、明治大3年でプロの世界に飛び込んだときも、すべて直感を信じて決断した。
「これまでも自分の直感に従って、いろんなところに飛び込んできたけれど、間違いなかった。今回もレターが届いたとき、何も考えずに直感で『行きたい』と思った。今までの決断と同じなので、間違いはないと思っています」
「とにかく突っ込んでやろう」
ラストマッチとなった名古屋グランパス戦に勝利したその夜、室屋はスーツケースに荷物と夢を詰めこんで、慌ただしく機上の人になった。
FC東京入りを決めたとき、21歳の青年は新たな冒険に胸を高鳴らせていたが、4年半が経った今は、不思議と落ち着いているという。
「年齢を重ねたこともあるけれど、どうなってもいい、という開き直りの気持ちも強いですね。どうなるか分からないけれど、とにかく突っ込んでやろうと思っています」