マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフト指名ボーダーの選手たちを
大学の監督が自らプレゼン!3/4
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKokugakuin University
posted2020/05/27 11:30
守備を武器にできるショートはプロでも貴重だ。國學院の小川龍成はプロで早い時期から出場機会を得る姿が想像しやすい選手だ。
上武大・谷口監督「古川ですかぁ!」
「古川ですかぁ! たいした選手じゃないですよ、古川なんて!」
上武大・谷口英規監督という方は、最初はいつもこんな感じである。それでいて、じっくり腰を据えた話となると、選手たちへの思いがもう止まらない、止まらない。
「だって僕、ウチに来た選手の中で、まだ日本の球界を背負って立つような選手に出会ってないですから」
ADVERTISEMENT
では、ようやくにして、そういう選手に出会ったのでは……。
そんな振り方してみたら、
「まあ可能性ですよね、あくまでも。こういう子は、将来どうなっていくんだろう……っていうんですか。それを見てみたいっていう気持ちは、すごく持たされるヤツですよね」
上武大・古川裕大捕手(185cm88kg・右投左打・久留米商高)は、すでに「学生ジャパン」常連の強肩強打の大型捕手として、バッテリー強化を優先事項にしている球団は「1位候補」に挙げている実力者だ。
「強肩強打……確かにそうなんですけど、意外に足も速いんですよ。本人、あんまり走る気出さないんですけど。僕的には、三拍子揃ったトータル能力の選手だと思ってるんですけどね」
数字は文句なしだが、期待はさらに上。
50m6秒2。捕手なら不足のない俊足だろう。
「走ればもっと新しい才能を開発できるのに、自分はバッティングの選手っていう思い込みがあるんですかね。すごく勿体ない。
野球に対してはクソ真面目。設定した目標は絶対クリアするんだって意識は人一倍で、実際、今までもそうやってスキルアップしてきたヤツなんですけど、石橋を叩いて渡るっていうのかなぁ。もっといい意味で“冒険”してもいいのにって思ってしまうんですよ、僕らから見ると」
昨年、3年生の1年間は、リーグ戦で通算4割台をキープ。8本塁打を飛ばしてみせた。数字だけなら、文句なしのはずだ。
「でも、まだ足りないと思うんです。ほんとの意味で、まだフルスイングしてないでしょ。もっと振れる。あの体とパワーなら、もっと振らなきゃいけない。振り過ぎて空振り三振、みたいなね。そういう場面が見たいんですよ。
だってあれでしょ、古川みたいなデカイのがコンコン当てにくるだけだったら、僕がピッチャーだったら、ぜんぜん怖くないもん」
谷口監督、浦和学院時代に左腕のエースとして甲子園ベスト4。東洋大、東芝では指折りのスラッガーとして鳴らしただけに、「投手目線」と「打者目線」、両方から選手を解析できる。