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ヤンキース本拠地デビュー、満塁弾。
松井秀喜、4月8日の知られざるツキ。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byAl Bello/Getty Images

posted2020/04/08 20:00

ヤンキース本拠地デビュー、満塁弾。松井秀喜、4月8日の知られざるツキ。<Number Web> photograph by Al Bello/Getty Images

2003年4月8日、季節外れの極寒のなか、松井秀喜はヤンキース史上初となる本拠地デビュー戦での満塁ホームランを放った。

ヤンキース101年の歴史上初の離れ業。

「期待外れか……」

 手厳しさで知られるニューヨークのビートライターたちの間では、そんな空気も流れ始めていた。その中で開幕わずか7試合目で2度目の「バーニー敬遠、松井勝負」である。

 ある意味、もう後がないような雰囲気でもあったが、そこで松井はとんでもない離れ業を演じて見せたのである。

 フルカウントからの6球目。

 ツインズの右腕、ジョー・メイズ投手の甘いチェンジアップをとらえた打球は、ライナーで右中間スタンドへと飛び込んでいった。このとき松井は、ヤンキース101年の歴史で、本拠地開幕戦で新人ながら満塁ホーマーを放った最初の選手となったのである。

ツキに助けられた場面があった。

 歴史に名前を刻む快挙。アスリートが何かを成し遂げるときには、その素質に加えて99の努力と、1つの幸運がある。

 実は松井にもこの打席で、1つだけツキに助けられた場面があったのはあまり知られていない。

 それはメイズがカウント2ボール1ストライクから投げた4球目だった。

「あれは完全な打ち損じだったね」

 後にこの1球について聞いたときに、松井はこう語るとニヤッと笑っていた。

 真ん中から外角に落ちるツーシーム系の球に思わずバットが出てしまったという感じのスイングだった。バットの先っぽに当たった完全なミスショットで、ボールは不規則なバウンドとなり三塁線からファウルゾーンに跳ねていったのだ。

 あともう少し、芯に近い部分に当たっていれば、逆にボールはボテボテのゴロになってフェアグラウンドに転がっていた可能性もあった。

“完璧なミスショットだったからこそ、変則的なスピンがかかって、ボールはファウルグラウンドへと逃げていってくれたのである。

【次ページ】 「ファンが打たせてくれたホームランだった」

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