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ヤンキース本拠地デビュー、満塁弾。
松井秀喜、4月8日の知られざるツキ。 

text by

鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byAl Bello/Getty Images

posted2020/04/08 20:00

ヤンキース本拠地デビュー、満塁弾。松井秀喜、4月8日の知られざるツキ。<Number Web> photograph by Al Bello/Getty Images

2003年4月8日、季節外れの極寒のなか、松井秀喜はヤンキース史上初となる本拠地デビュー戦での満塁ホームランを放った。

「ファンが打たせてくれたホームランだった」

 ツイていた。

 そしてそのツキを逃さず結果へと結びつけたのが、2球後の一撃だったという訳である。

「打った瞬間にスタンドに届くという感触はありましたね。それとやっぱり言葉には表せない嬉しさが込み上げてきた。自分でも感激しました。

 開幕から7試合目というのは、長かったと言えば長かったですけどね。ただ、このホームランのように、甘い球が来れば必ず打てると思っていましたから、焦りはなかった」

 後のインタビューで松井はこのメモリアルアーチをこんな風に振り返っている。

 そしてスタンドが総立ちになった場面はくっきりと目に焼き付けられていて「ある意味、ファンが打たせてくれたホームランだった」とも語っていた。

スター独特の「持っている」というヤツ。

 この2003年4月8日の1本から松井がメジャーで刻んだ公式戦175本、ポストシーズン10本を合わせた185本塁打の軌跡が始まることになる。

 その中には2009年のワールドシリーズMVPを確定させた3本塁打など、松井らしい勝負強さを印象付けるビッグアーチも含まれている。

 もちろんバットマンとしてのとてつもない才能とそれを支えた努力が生んだアーチの数々だ。

 ただ、この開幕戦本塁打や世界一を決めたワールドシリーズでの一撃など、そういうおいしい場面で打席が回ってくることも、松井の松井らしさであると思う。

 いわゆるスター独特の「持っている」というヤツだ。

 そんな大スター・松井秀喜と雑談をしているときに、私が不遜にもこんなことを言い放ったことがあった。

「ホント、(ツキが)太いね!」

 すると松井は真顔でこう返してきた。

「ツキも実力の内でしょう!」──。

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