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愛すべき貴公子トーレスの名ゴール。
イニエスタ、ビジャとラストダンス。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byGetty Images
posted2019/08/21 11:30
現役引退を決めたトーレスの最終試合はイニエスタとビジャがいる神戸との一戦だ。
カシージャスの牙城を破ったゴール。
アトレティコ時代(第1期)
2007年2月24日/レアル・マドリー戦
今ではアトレティコはディエゴ・シメオネ監督のもと、バルサ、レアル・マドリーに肉薄する3強となっている。しかしトーレスがトップチームに昇格した21世紀初頭は2部にいたほど低迷していた。
同都市のレアルとはライバルと言えないほどの差があり、トーレスの所属時にアトレティコは一度もダービーに勝てず、トーレスもゴールを奪えなかった。しかし自身にとって、ひとまず最後のダービーとなった試合で、トーレスは右サイドのクロスを鮮やかにトラップし、GKカシージャスの牙城を破った。これにはかつての本拠地ビセンテ・カルデロンが沸かないわけがなかった。
ちなみにトーレスは2002-03シーズンから'06-07シーズンまですべてリーガで2ケタ得点をマークしている。これだけの結果を残せば、クラブのアイドルになるのも納得である。
EURO制覇を決めたチップキック。
スペイン代表時代
2008年6月29日/EURO2008決勝ドイツ戦
かつてのスペインは、強い強いと言われるけど評判倒れの繰り返し。それを払拭したのは2008年のユーロだった。「クワトロ・フゴネス(4人の創造者)」と評されたイニエスタ、シャビ、セスク、ダビド・シルバの華麗な中盤のパスワーク。そして仕上げ役を担ったのはビジャとトーレスだった。
得点王に輝いたのは計4ゴールのビジャだったが、準決勝ロシア戦で負傷して決勝は欠場。そんなピンチに大仕事をしたのはトーレス。シャビの心憎いほど正確なスルーパスに反応し、相手DFラームを一瞬で出し抜くと、飛び出してきたGKレーマンを見極めたチップキックで勝負あり。トーレス、そしてスペインらしさを凝縮させたゴールで、1−0勝利の立役者となった。
2008年のトーレスはリバプールも含めて抜群の勝負強さを発揮。バロンドールではロナウド、メッシに次ぐ3位と、2人に比肩する実力だったのだ。